2026年6月号Volume 23 Number 6
静電気の予測不能な謎に迫る
数世紀にわたって科学者を翻弄してきた静電気。同じ条件でも結果が異なる「気まぐれな挙動」の正体が、ようやく明らかになり始めた。最新の研究では、物質が持つ接触の履歴や 表面に付着した炭素含有分子が電荷交換の極性を決定することが実証されている。これまで「制御不能」とされてきた現象を、緻密な科学の枠組みで捉え直す試みが進む。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「下水システムからひそかに排出される温室効果ガス」「地球温暖化に耐えられるEVバッテリー」「HIV:月1回の注射が毎日の錠剤に代わる選択肢となる」「アレルゲンを分解する細菌がピーナツアレルギー反応を緩和」、他。
News in Focus
「スーパーエイジャー」の脳は、新しいニューロンを盛んに産生している
並外れた記憶力を持つ高齢者は、驚くほど多くの未成熟ニューロンを持つことが確認された。
タンパク質が折りたたまれる瞬間を捉えた
リアルタイム技術により、タンパク質は、より単純な分子であるDNAよりもさらに迅速に、複雑な三次元構造をとることが明らかになった。
LLMは研究不正への加担要求を拒否しない
13の主要なチャットボットに論文捏造を要求する検証を行ったところ、不当な要求にどこまで抵抗するかにはモデルによって大きな差があった。
AIがゲノムを書けるようになったが人工生命が作り出されるのはいつか?
DNA言語モデルEvo 2が短いゲノム塩基配列を生成できることが示された。これは微生物の創出に向けた一歩である。
査読の質も礼儀も改善させるAIコーチ
5つの大規模言語モデル(LLM)から構成される査読コーチシステムは、査読者がより建設的なコメントをするのを助けるが、これにより論文の質は向上するのだろうか?
プレートテクトニクスの開始は予想より早かった?
地球最古のジルコン結晶の解析から、33億年前の地球では既に地殻が大規模に再循環していた可能性が示された。
学会の講演でのジョークはすべりがち
研究者が学会での講演中にジョークを言う回数と、その受け具合が調査された。
気候変動の進む速さはこの10年でほぼ倍増
最新の解析により、地球は現在、10年当たり約0.35℃のペースで温暖化していることが判明した。
Features
ドーパミンは本当はどんな働きをしているのか?
ドーパミンは長い間、脳内における報酬決定因子として知られてきたが、最近の研究からこの定説が覆されるかもしれない。
心的イメージを持たない人々
アファンタジアの人は数多く存在することが分かっているが、彼らの脳では何が起きているのだろうか。
静電気のショッキングな秘密
静電気はごく身近な現象だが、その予測不能な振る舞いは、何世紀にもわたって科学者らを当惑させてきた。最新の研究により、こうした振る舞いの謎が解明され始めている。
複数がんを検出する血液検査の実力と課題
数十種類のがんの検出をうたう多がん種早期検出(MCED)検査が複数の企業によって開発されているが、その実際の性能とは。
Japanese Author
Free access
ミクログリアがシナプスを食べる瞬間を可視化する
国立精神・神経医療研究センターの小山隆太部長は、捉えるのがこれまで困難だった、ミクログリアがシナプスを「食べる」様子をライブイメージングで可視化することに成功した。
News & Views
超高輝度超新星がマグネターである新たな証拠
ある超高輝度超新星が、強い磁場を持つ中性子星によってエネルギーを供給され、この中性子星は周囲のガスの軌道をゆがめているとみられることが、その明るさの振動の分析で分かった。
AIによる臨床細胞検体の撮像・評価支援
臨床現場で人工知能(AI)を用いて細胞診標本のスライドを撮像し、診断上の判断に役立つ可能性のある細胞の特徴を迅速に評価できることが報告された。
皮膚の表皮突起に関する進化的知見
表皮突起の発生過程の解析から、単純な構造的変化が組織の力学特性やシグナル伝達経路を再構築し、異なるタイプの皮膚構造を作り出す仕組みが明らかになった。
磁性流体を用いる左心耳閉鎖術
注入可能な磁性流体を、目的の場所に誘導してゲル化させることにより、心臓の一部を安定的に閉鎖できることが動物実験で示された。
腸内微生物が老化に伴う認知機能低下に影響する
マウスにおいて、老化に伴う腸内の微生物の変化が、腸と脳の間のシグナル伝達を変化させ、認知機能の低下を招くことが示された。
Advances
全身ハンマー
キツツキは木をつつくとき、全身の筋肉を総動員している。
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