News & Views

捕らえられたプロメチウム

古代ギリシャ神話のティタン神プロメテウスは、天界から火を盗んで人間に与えた罰として岩に縛り付けられた。希少な放射性元素「プロメチウム(Pm)」は、このプロメテウスにちなんで名付けられたが、その名に反して、捕らえて縛り付ける、つまり化学的に結合させることが極めて難しい。このたび、オークリッジ国立研究所(米国テネシー州)のDarren Driscollら1は、新たに開発した有機配位子分子を水溶液中でPmイオンと結合させて錯体を合成することに成功し、Nature 2024年5月23日号819ページで報告した。この錯体の特性評価からは、Pmとその化合物の化学的・物理的特性に関する基礎知識が得られ、ランタノイド(Ln)系列(Pmが属する元素群)の全ての元素の錯体を実験で比較することが初めて可能になった。

全文を読むには購読する必要があります。既に購読されている方は下記よりログインしてください。

翻訳:藤野正美

Nature ダイジェスト Vol. 21 No. 8

DOI: 10.1038/ndigest.2024.240850

原文

Promethium bound: fundamental chemistry of an elusive element finally observed
  • Nature (2024-05-23) | DOI: 10.1038/d41586-024-01193-3
  • Kristina O. Kvashnina
  • ヘルムホルツセンター・ドレスデン・ロッセンドルフ(ドイツ)に所属

参考文献

  1. Driscoll, D. M. et al. Nature 629, 819–823 (2024).
  2. Brauner, B. Nature 118, 84–85 (1926).
  3. Marinsky, J. A., Glendenin, L. E. & Coryell, C. D. J. Am. Chem. Soc. 69, 2781–2785 (1947).
  4. Kistiakowsky, V. Phys. Rev. 87, 859–860 (1952).
  5. Butement, F. D. S. Nature 167, 400 (1951).
  6. Bruno, M. & Croatto, U. Nature 183, 601 (1959).