抗肥満薬が食欲をつかさどる神経回路を再配線する
脳は1日に食べる量と消費するカロリーを調節する役割を担っているが、肥満症ではこのバランスが崩れ、体重が増加する。数年前まで、長期的な体重管理のための最も効果的な戦略は外科手術だった。現在では、人気の高い抗肥満薬であるセマグルチド(販売名オゼンピックおよびウゴービ)とチルゼパチド(販売名マンジャロ)が、手術とほぼ同等の体重減少効果を示している。これら2つの薬はいずれも、腸で作られるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)というペプチドホルモンの構造を元にしたもので、脳のGLP-1受容体に作用して摂食を抑制する。しかし、高価であり、需要が高くて手に入りにくく、人によって効果に差があるため、抗肥満薬の選択肢を増やす必要がある。このほど、GLP-1受容体作動薬と脳に作用する別の薬剤を結合させた分子が効果的な抗肥満薬になる可能性があることを、ノボ ノルディスク財団基礎代謝研究センターおよびコペンハーゲン大学(共にデンマーク)のJonas Petersenら1がNature 2024年5月30日号の1133ページに報告している。
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翻訳:藤山与一
Nature ダイジェスト Vol. 21 No. 8
DOI: 10.1038/ndigest.2024.240844
原文
Dual-action obesity drug rewires brain circuits for appetite- Nature (2024-05-30) | DOI: 10.1038/d41586-024-01352-6
- Tyler M. Cook & Darleen Sandoval
- 共にコロラド大学(米国オーロラ)に所属
参考文献
Petersen, J. et al. Nature 629, 1133–1141 (2024).
- Gabery, S. et al. JCI Insight 5, e133429 (2020).
- Turcot, V. et al. Nature Genet. 50, 26–41 (2018).
- Pechnick, R. N. et al. Neuropharmacology 28, 829–835 (1989).
- Hall, K. D. Obesity 30, 11–13 (2022).
- DiFeliceantonio, A. G. & Small, D. M. Nature Neurosci. 22, 1–2 (2019).
- Wilding, J. P. H. et al. Diabetes Obes. Metab. 24, 1553–1564 (2022).