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創薬に有望な原子置換反応の化学
医薬品や農薬の有効成分分子は、主に複数の炭素(C)原子でできた「骨格」からなるが、こうした骨格には、窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)といった他の原子も含まれる。骨格を構成する原子の1つを別の元素の原子で置き換えることによる骨格の変換は、生物活性化合物の類似体を合成する単純な方法をもたらすため、化学者たちにとって有益な手段となる。しかし、そうした変換反応は概念的に単純で汎用性が見込まれるものの、現在のところ、有機合成で用いられている広範な反応レパートリーにはほとんど含まれてない。シカゴ大学(米国イリノイ州)のJisoo Wooら1はこのたび、医薬品化合物によく見られる「キノリン」という分子のC原子の1個をN原子に置き換える実用的な戦略を開発し、Nature 2023年11月2日号77ページで報告した。これは、有機分子の単一原子置換の実に見事な例である。
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翻訳:藤野正美
Nature ダイジェスト Vol. 21 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2024.240244
原文
Atom-swap chemistry could aid drug discovery- Nature (2023-11-02) | DOI: 10.1038/d41586-023-03297-8
- Filippo Ficarra & Mattia Silvi
- 共にノッティンガム大学(英国)に所属。
参考文献
- Woo, J., Stein, C., Christian, A. H. & Levin, M. D. Nature 623, 77–82 (2023).
- Corey, E. J. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 30, 455–465 (1991).
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