キリンの首が長くなったのはモテるからかもしれない
ディスコケリクス・シエジー(Discokeryx xiezhi)の想像図。戦闘に適応した分厚いヘルメットが備わっていた。 Credit: Y. WANG AND X. GUO
キリンの首はどうして長くなったのか。約1690万年前の中国に生息していたキリン類動物が、その難問を解くカギになる可能性があるという。ユニコーンに似た伝説上の獣にちなんで命名されたその動物には、頭部を高速でぶつけ合う戦闘スタイルに適した分厚いかぶとが備わっていた。
キリンの首は何十年にもわたって研究者の興味の対象となってきた。その並外れた長さは困難をもたらすものであり、それなりの事情があるはずだ。一般的な説の1つとして、食料を求めて高い木まで届くように首を長く進化させた、というものがある。また、異性を巡る競争のためという説もある。首が長い方が異性を引きつけるのに役立ち、雄は首を振り回して激しく戦うからだ。ただしこの説は、雄の首が雌以上に長いわけではないという事実に基づいて反論されることがある。ケープタウン大学(南アフリカ共和国)の行動生態学者Rob Simmonsは、「従来のキリン研究者にとって、この性選択説はとても受け入れ難いものでした」と語る。Science 2022年6月3日号の論文に記載された古代のキリン類動物の骨の化石は、その議論に新たなデータを加えている(S.-Q. Wang et al. Science 376, eabl8316; 2022)。
従来のキリン研究者にとって、この性選択説はとても受け入れ難いものでした
始まりは1996年、今回の論文の著者の1人であるアメリカ自然史博物館(ニューヨーク)の古脊椎動物学者Jin Meng(孟津)が、中国北部のジュンガル盆地の砂の上で、4個の椎骨を伴う頭蓋骨を発見したことだった。「孟さんが『珍獣だ!』と叫んだのです」。筆頭著者である中国科学院古脊椎動物古人類学研究所(北京)の古生物学者Shi-Qi Wang(王世騏)はこう振り返る。MengやWangらは、20年がかりで同じ種の化石を77点以上発見した。その中には別の2個体の頭蓋骨や数点の歯が含まれている。これらは、これまで知られていなかったキリンの近縁動物で、約1690万年前(中新世)に生きていたものとして記載された。それはキリンというよりも首の短いオカピ(Okapia johnstoni)に似ていたと考えられ、頭頂部にはケラチン層が積み重なった厚さ5 cmの硬い構造物があった。そして、ユニコーンに似た中国の伝説上の獣「獬豸(かいち;xiezhi)」にちなんで、ディスコケリクス・シエジー(Discokeryx xiezhi)と命名された。Simmonsによれば、その頭頸部の骨の複雑な構造は、それが「雄同士の戦いに使われる力と強さに見事に適応していた」ことを示しているという。
Wangの考えでは、キリン類動物の祖先は、森林を離れて草原に入ると、首を使ってそれまで以上に激しく戦ったため、その戦闘スタイルの進化に伴って首が長くなったのだという。しかし、高所の採餌という面でもおそらく役割はあったろうとWangは言う。
一方、ニューヨーク工科大学整骨医学カレッジ(米国オールドウェストベリー)の古有蹄動物学者Nikos Solouniasは、今回記載された頭突き反芻動物が現生のキリンに特に近縁であるとか、それがキリンの首について多くを教えてくれるといった考え方に納得してはいない。「反芻動物はみんな角と首で戦います」とSolouniasは話す。「キリンの戦い方は違います。進化史が違うのです」。しかしSimmonsは、今回の研究はキリン類動物の祖先の首の形に性選択が強く関わったことを示しており、現生のキリンでも「当てはまり得る」と考えることができると主張する。
翻訳:小林盛方
Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 9
DOI: 10.1038/ndigest.2022.220909
原文
How the giraffe got its neck: ‘unicorn’ fossil could shed light on puzzle- Nature (2022-06-02) | DOI: 10.1038/d41586-022-01565-7
- Nicola Jones
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