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Science の出版元がOAポリシーを拡大

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210420

原文:Nature (2021-01-15) | doi: 10.1038/d41586-021-00103-1 | Science family of journals announces change to open-access policy

Richard Van Noorden

一部のプランS参加機関から資金提供を受けている研究者は今後、AAASの購読型学術誌で論文を出版するに当たって、受理されたバージョンの原稿をオープンライセンスの下で共有できるようになる。

Science を出版するAAASは、プランS参加機関の要件に対し、グリーンOAで対応すると発表した。 | 拡大する

AB/NurPhoto via Getty Images

Science の出版元である米国科学振興協会(AAAS;ワシントンD.C.)は、オープンアクセス(OA)に向けた一歩として、AAASが出版する著名な購読型学術誌で論文を出版する著者の一部が、受理された原稿をオンラインでオープンに共有することを認めると発表した。その場合、共有されたその原稿は、誰でも複製したり再配布したりすることができるようになる。

この変更により、大胆なイニシアチブ「プランS(Plan S)」の下でOA出版を要求する一部の研究資金配分機関から資金提供を受けている科学者は、今後もScience やその関連誌で論文を出版することが可能になった。2021年1月1日に発効したプランSには20以上の資金配分機関が参加しているが、その開始日は機関によって異なる。

過去数カ月の間に、選択性の高い購読型学術誌の多くが、プランSに対応するために、論文をOA出版するための費用を著者が負担するオプションを導入してきた。しかし、Science の出版元であるAAASは、論文掲載料(APC)が著者の手が届かない金額になる恐れがあることを理由に、このオプションの導入を回避する方法を模索していた。

AAASの新しいポリシーでは、一部のプランS参加機関から資金提供を受けている研究者は、論文の出版と同時に、受理されたバージョンの論文を、誰でも原稿を再配布したり複製したりすることができるオープンライセンスの下で、オンラインで自由に共有できるようになる。なお、原稿の共有に関する方針をまだ決めていない英国研究・イノベーション機構(UK Research and Innovation)などの一部のプランS参加機関には、AAASの新しいポリシーは適用されない。

AAASは以前から、著者が主導する論文共有(グリーンOAと呼ばれることがある)を許可していたが、その条件として、原稿の共有を認めるのは個人または機関のウェブページ上のみであり、再配布はできないと明記していた。また、PubMed Centralなどのリポジトリへの原稿の投稿は、出版後6カ月たたないと認められなかった。プランS参加機関は、「科学者は、学術誌において論文をOA出版するか(ゴールドOAと呼ばれる)、それができないのであれば、受理されたバージョンの原稿を出版と同時に完全オープンライセンスの下で共有しなければならない」と定めているため、AAASの従来の条件では、プランS参加機関の要件を満たすことができなかった。

法的義務

2020年7月には、一部のプランS参加機関は、ジャーナルの出版契約書にどのような記述があっても、受理された原稿をオープンに共有する権利を著者が保持することを、資金提供の法的条件とするとまで言った。

AAASは今、この「権利保持スキーム(rights retention scheme;RRS)」を採用するプランS参加機関から資金提供を受けた科学者は、共有する原稿にオープンライセンスを適用することができるとしている。しかし、プランS参加機関から資金提供を受けていない科学者がAAASの学術誌に論文を出版する場合には、それは認められない。

プランSに参加する資金配分機関のグループ「コアリションS(cOAlition S)」の事務局長であるJohan Rooryckは、「プランSは常に、著者がグリーンOAを通じてOAポリシーを遵守できるようにしてきました。このため、AAASがポリシーを更新したことをうれしく思っています」とする声明を出した。

新しい取り決めは、2021年以降、Science やその関連誌に投稿される全ての研究論文に適用される。Science に掲載される原稿の多くが、オープンライセンスの下で共有されることになるだろう。クラリベイト・アナリティクス(Clarivate Analytics;米国ペンシルベニア州フィラデルフィア)によると、2017年にScience で出版された論文の31%が、プランS参加機関から資金提供を受けているからである。

他の学術誌も、プランSに準拠するためにグリーンOAを採用し始めている。例えば2020年10月には、The New England Journal of Medicine が、プランS参加機関から資金提供を受けている科学者に、2021年以降グリーンOAを許可すると発表した。また、英国王立協会は、以前から発行している学術誌でグリーンOAを許可しており、資金配分機関からの要請がある場合にはオープンライセンスの下での共有を認めている。

オープンアクセスへの道

選択性の高い他の購読型学術誌は、これらとは違った方法でプランSに対応している。出版社シュプリンガー・ネイチャーは2020年11月に、Nature およびNature リサーチ誌では論文1本につき9500ユーロ(約120万円)のAPCでOAオプションを提供すると発表し、一部の学術誌においてはAPCを引き下げるためのプログラムを試験的に実施している(2021年3月号「Nature およびNature リサーチ誌も、全著者向けOAオプションを提供」参照)(Nature は、その出版元から編集上の独立を保っている)。また、2020年12月には出版社であるエルゼビア(オランダ・アムステルダム)が、セル・プレス(Cell Press)の学術誌についてOAオプションを発表した。それによると、Cell でOA出版する場合の論文掲載料は8500ユーロ(約110万円)で、その他の学術誌では7600ユーロ(約98万円)になるという。

多くの科学者は、APCが高過ぎると感じている。プランS参加機関から資金を受けている科学者ならその費用を支払うことができるかもしれないが、多くの研究者はOAで出版するオプションを選択することはできないだろう(エルゼビア社は、低所得国の研究者に対してはAPCを免除し、その他の一部の国々の研究者に対してはAPCを減額するとしている)。AAASは、自分たちの購読型学術誌でゴールドOAを採用せずにグリーンOAを選択した理由はここにあると説明している。

AAASは声明で、「このアプローチは、ゴールドルートのみによりOAを促進することは、著者に過度な金銭的義務を課すものであり、異なる人種、ジェンダー、地域、分野、機関の著者の間に以前からある不平等を固定化したり、深刻化させたりする恐れがあるというAAASの懸念を反映したものです」としている。

ロンドン大学インペリアルカレッジ(英国)の構造生物学者であるStephen Curryは、「AAASのアプローチは、プランS参加機関の要件に対しグリーンOAによって応えようとする大胆な動きであり、APCのビジネスモデルにある不平等を指摘している点で注目に値します」と言う。

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(米国)の図書館員Lisa Hinchliffeは、AAASのアプローチは、Science やその関連誌で論文を出版するほとんどの科学者には完全OA出版のオプションという選択肢がないことを意味する、と指摘する。「ある出版ルートの恩恵が拡大されても、その対象になる科学者は一部であり、それ以外の科学者はその恩恵を受けられません。科学研究のエコシステムの中の格差が固定化されてしまうのは残念です」と彼女は言う。

AAASは「購読型学術誌のグリーンOAモデルが持続可能かどうかを確認するための1年間の実験」としてこれを試したいと、Science とその関連誌の出版者であるBill Moranは述べている。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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