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孤独なハエに何が起こるか
神経科学者のBruce McEwenは、2002年にこう記した。ストレスは現代における最も重要な公衆衛生上の問題であり、「慢性的にストレスがかかると、障害が起きて、病気を促進する可能性がある」1。多くのストレス要因は社会的なものであり、McEwen1をはじめとする研究者たち(go.nature.com/3s3b4kw)は、貧困、不十分な教育、暴力犯罪といった社会的圧力が、がんや糖尿病やうつ病などの病気の発症に関与している可能性があることを懸念し、指摘した。しかし、これらの社会的圧力がどのように疾病につながるかについてはほとんど分かっていない。このほど、ロックフェラー大学(米国ニューヨーク)のWanhe Liら2は、Nature 2021年9月9日号239ページで、キイロショウジョウバエを使用して個体の健康に対する社会的状況の影響をモデル化する、興味深く独創的なアプローチを報告している。
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翻訳:古川奈々子
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 12
DOI: 10.1038/ndigest.2021.211242
原文
Chronically lonely flies overeat and lose sleep- Nature (2021-08-18) | DOI: 10.1038/d41586-021-02194-2
- Joel D. Levin
- Joel D. Levinはトロント大学(カナダ・オンタリオ州ミシサガ)に所属。
参考文献
- McEwen, B. & Lasley, E. N. The End of Stress As We Know It (Dana, 2002).
- Li, W. et al. Nature 597, 239–244 (2021).
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