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家禽になり損ねたキジ

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200715a

かつてはニワトリのライバルだったようだ。

現代のキジ。 | 拡大する

MIKEDABELL/E+/GETTY

ニワトリは地球上の鳥のうち圧倒的に最多で、その数は約230億羽にも上る。だが最近の研究から、後に世界が好む家禽となる鳥の候補がかつては別にあったことが示唆された。中国で発見された古代の鳥の骨が、これまで長らく推定されていた最初に家畜化されたニワトリのものではなく、実はキジの骨であることが判明した。この研究は、野生のキジがかつて人間の近くで一緒に生息していたことも示しており、家畜化の初期過程に光を当てている。

「例えば、シカが狩猟採集民と一緒に暮らしていた証拠が見つかったら異例でしょう」と米国カリフォルニア州に拠点を置く環境コンサルティング会社デューデックの考古学者で、2020年2月にScientific Reports に報告されたこの論文の筆頭著者であるLoukas Bartonは言う。「しかし今回の事例は、野生動物が人間の生活圏で生息していたことを示しています」。

ほとんどの考古学者がニワトリの家畜化を示す最古の証拠と考えていた試料は、中国北部にある8000年前の遺跡で、ブタやイヌの骨や農具と共に見つかった鳥の骨である。だがニワトリの祖先となった野生種セキショクヤケイはもともと東南アジアが原産であり、そこから1500km以上も離れた場所にそれがなぜ急に現れたのか、多くの研究者が不思議に思っていた。そして2015年に、この骨が中国北部に自生するキジのものである可能性が提唱された。

新石器時代、人と暮らしていたキジ

Bartonらは決定的な答えを得るため、中国北西部・甘粛省の7500年前(新石器時代)の大地湾遺跡で見つかった8つの鳥の骨を調べた。これらは以前、ニワトリの骨と同定されていたものだが、オクラホマ大学(米国)の研究者がミトコンドリアゲノムの配列解析など2種類の方法を用いて調べた結果、キジのものであることが遺伝学的に確認された。

生化学検査から、これらのキジは主に人間が栽培していた雑穀を食べていたことが分かり、年間を通じて人のそばで暮らしていたことが示唆された。これは家畜化の第一歩であり、初期のニワトリの家畜化によく似ているとBartonは言う。つまり野鳥が人間と密接な関係を持ち始め、ついには長く続く相互依存的な関係になる。ただし本当の家畜化は人為的な選抜による身体的または遺伝的な変化を伴うのに対し、この古代のキジのゲノムは現代のキジと一致している。このためこれらのキジは、厳密にはまだ“野鳥”のままだ。

山東大学(中国)の遺伝学者Yu Dong(この研究には加わっていない)は、これらの「非常に重要な発見」は家畜化の歴史を解明する上で重要な手掛かりとなると言う。だが、新石器時代の人々がキジを歓迎していたのかどうかは疑問だと考える。「現在は多くの場所で、鳥が穀物を食べないよう畑にネットが張られています」とDongは指摘する。

(翻訳協力:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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