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免疫療法の最前線に位置するB細胞

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200433

原文:Nature (2020-01-23) | doi: 10.1038/d41586-019-03943-0 | New predictors for immunotherapy responses sharpen our view of the tumour microenvironment

Tullia C. Bruno

このほど3つの研究から、免疫療法を受けた患者の良好な転帰に関連する免疫の2つの重要な構成要素が明らかになった。それは、B細胞と、それを含む三次リンパ組織様構造である。

現在の免疫療法は、細胞傷害性T細胞と呼ばれる免疫細胞を再活性化して、がんと闘うことを目的としているが、このタイプの治療から持続的に臨床的な恩恵を得られるがん患者はわずか20%である1。この転帰を改善するには、患者の腫瘍に存在する他の免疫細胞に注目すればよい可能性がある。このほど、免疫療法への奏効性の高さが、ヒト腫瘍における三次リンパ組織様構造(TLS)と呼ばれる区画内のB細胞の存在と関連することが、異なる3つの研究チームで実証され、Nature 1月23日号で3編の論文として発表された。発表者は、ルンド大学(スウェーデン)のRita Cabritaら(561ページ2、INSERMおよびパリ大学、ソルボンヌ大学、対がん連盟(いずれもフランス)のFlorent Petitprezら(同556ページ3 、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター(米国ヒューストン)のBeth A. Helminkら(同549ページ4である。これらの補完的な研究により、予後を予測する新しい方法が免疫療法に追加された。

腫瘍にB細胞が存在することは、患者の生存率の上昇の予測因子であると考えられてきたが5, 6、B細胞には抗腫瘍と腫瘍促進の両方の役割が報告されている7。このような異なる役割に関する報告は、B細胞が腫瘍において多数の役割を担い得ることを反映している。B細胞の抗腫瘍機能を構成する1つの要素は、B細胞の活性化である。B細胞の活性化の過程には、B細胞表面上のB細胞受容体タンパク質に腫瘍由来タンパク質が結合し、続いてこの腫瘍由来タンパク質が抗原と呼ばれる小さなペプチド断片にプロセシングされることの他、補助因子も関与している。活性化されたB細胞は抗体を放出することができ、この抗体が腫瘍細胞に結合すると、その腫瘍細胞は免疫系の他の細胞によって攻撃される(この過程は抗体依存性細胞死として知られている)8 。また活性化B細胞は、腫瘍抗原をT細胞に提示することでT細胞を「教育」でき、これによってT細胞は腫瘍細胞を効率的に標的として認識できるようになる9。しかし、腫瘍内のB細胞は、免疫細胞の機能を妨げる阻害因子を産生する可能性がある(図1)。そうした阻害因子は、免疫系を抑制するシグナル伝達分子7,10,11あるいはB細胞表面上の阻害分子ではないかと考えられていて、体の免疫系が腫瘍細胞を標的として殺傷する能力を制限する。

図1 腫瘍微小環境において多面的な機能を持つB細胞
B細胞は多数の役割を担っていると考えられている。三次リンパ組織様構造(TLS)と呼ばれる区画には、T細胞と共にB細胞も存在し、B細胞はTLSが未成熟であるか成熟しているかに依存して、免疫系による腫瘍細胞殺傷能力を抑制したり、促進したりする。
a 組織構造が十分に構築されていない未成熟TLSでは、1つの仮説として、B細胞は免疫系による抗腫瘍応答を阻害する因子を産生すると考えられている。このような阻害因子は、B細胞から放出されて他の免疫細胞の応答を減弱させる分子、あるいは、B細胞表面上に存在して、腫瘍細胞の標的化や破壊を妨げる分子と考えられている。B細胞とT細胞の相互作用が少なく、B細胞と悪性腫瘍との相互作用が多い場合に、このような阻害機構の両方が生じる可能性がある。今回の3つの研究2-4から、未成熟TLSが腫瘍でのT細胞活性の低さと関連するという間接的な証拠が示された。
b 対照的に、組織構造が構築されている成熟TLSでは、B細胞は腫瘍を標的とするための抗体を放出する。またB細胞は、腫瘍内のT細胞に抗原(黄色)と呼ばれる腫瘍由来タンパク質を提示することで、T細胞を活性化できる。今回の研究から、成熟TLSにおけるB細胞の存在が、T細胞活性の増強や、免疫系が腫瘍細胞を標的とする能力の改善、腫瘍が免疫療法に反応する可能性の上昇と相関することが示唆された。 | 拡大する

TLSは、免疫学的な刺激に応答して生じる免疫細胞(主にT細胞とB細胞)の集合体である。成熟TLSは胚中心と呼ばれる構造の内部でB細胞の発達と機能を促進するが、未成熟TLSには適切な構造の胚中心が存在せず、完全なB細胞機能を誘導できない可能性がある。腫瘍にTLSが存在することは、多くのタイプのがんにおいて、患者の生存率の上昇とも相関している12。今回の3つの研究では、この傾向が免疫療法の状況で確認され、腫瘍内へのB細胞の浸潤は、腫瘍内でのTLSの存在と共に、免疫療法への奏効性の改善に関連することが実証された。

Cabritaらは、転移性黒色腫と呼ばれるタイプのがんの患者について研究を行い、Petitprezらは、骨や軟部組織のがんである肉腫の患者について調べた。両研究チームは、治療前の腫瘍内TLSにB細胞が存在すると、患者の腫瘍が免疫療法に反応する可能性が高まることを見いだした。一方、Helminkらは、これらの知見を転移性黒色腫で裏付け、腎細胞がんにおいても治療前の患者に同様の傾向が見られることを報告した。さらに治療中においても、治療に反応していない腫瘍を持つ患者よりも、治療に反応している腫瘍を持つ患者の方にTLSがより高頻度に見られることを実証した。TLSが存在するタイミング、すなわち治療前に確認できることは、TLSが患者の免疫療法への奏効性の予測因子になると考えられるため重要だ。その一方で、治療中にもTLSが存在することから、カギとなる免疫細胞の組み合わせが操作されて、TLS形成が誘導されることが示された。これらの細胞の組み合わせを特定できれば、免疫ベースの新しい有効な治療法の確立に役立つかもしれない。

この3つの研究チームは、B細胞とTLSのシグネチャーが、非奏効患者ではなく奏効患者でより顕著に見られる場合が多いことを見いだした。さらに、このシグネチャーは、免疫療法の転帰の理解に現在用いられている指標として代表的なT細胞シグネチャーよりも優れていた。このことから、B細胞とTLSが抗腫瘍免疫において重要な役割を担う可能性があると考えられた。

今回の研究は、このような相乗的な結果に加えて、それぞれの研究で抗腫瘍免疫におけるB細胞あるいはTLSの独特な役割を明らかにしている。まずCabritaらは、TLSのB細胞が細胞傷害性T細胞と共存することで、最終的に腫瘍細胞を標的として認識できるようにすることを実証した。またPetitprezらは、肉腫において成熟TLSの特徴となるシグネチャーを報告した。通常は腫瘍部位には免疫細胞が浸潤していないと考えられていたが、Petitprezらの研究により、成熟TLSが腫瘍部位に存在できることが初めて示された。そしてHelminkらは、非奏効患者よりも奏効患者でB細胞受容体の多様性が増加していることを見いだし、奏効患者のB細胞プールは、非奏効患者のB細胞プールよりも腫瘍抗原を特異的に認識する能力が高いことを示した。

奏効患者の TLS には、B 細胞(黄:CD20+)と共に、T 細胞(白:CD4+、赤:CD8+、黄緑:FOXP3+)も観察された。CD21+(緑)は濾胞樹状細胞で、胚中心に存在する。 | 拡大する

Ref.4

これらの論文は、熟練した技術で、統計的にロバストな患者集団を用いることで、B細胞とTLSが抗腫瘍免疫の最前線に位置することを示した。しかし、まだ明らかにすべきことはたくさんある。まず、腫瘍にTLSが形成される仕組みについて、より重点的に理解する必要がある。TLSの構造は変化し、未成熟にも成熟にもなり得ることは明らかである。では、TLSにおけるB細胞機能に多様性があることは何を意味していて、TLSの1つの「性質」が他の「性質」と比べて誘導されやすいのは何によるのだろうか? 患者の性別、年齢、腫瘍のタイプと共に、喫煙あるいはウイルスや細菌の感染などの環境要因の関与を考慮しなければならない。

また、B細胞免疫を最大限に発揮するために、腫瘍において成熟TLSの定期的な形成が誘導されるかどうかも調べるべきである。これに取り組むためには、まだ治療を受けていない患者のB細胞とTLSについて調べたり、ヒト腫瘍の微小環境を適切にモデル化したりする必要がある。現在の証拠から、がんのマウスモデルのほとんどにおいて、B細胞が実際に抗腫瘍応答を妨げることが示されている13-15。しかし、これらのモデルではTLSが形成されることは稀であり、TLSが存在しないことにより、B細胞の運命や、運命決定後のB細胞機能が変化する可能性がある。実際に、腫瘍微小環境におけるB細胞の全体像を明らかにするには、TLS以外の場所でのB細胞機能についてさらなる知識が必要である。

また、B細胞が腫瘍において発揮する機能の全ての範囲を明らかにする必要がある。B細胞は、腫瘍特異的抗体の産生や、抗原の提示における役割が知られているが8,9、それに加えて他の機能も持つ可能性がある。例えば、抗体依存性細胞死の誘導などである8。また、これらの機能を特定のタイプのB細胞に結び付けたり、そのようなB細胞がTLSの内部あるいは外部に見られるかどうかを明らかにしたりする必要もあると考えられる。B細胞サブセットには明確なバイオマーカーがあるが、これらのサブセットをヒト腫瘍における機能に結び付けられれば、特定の抗腫瘍活性を持たせるために最適化することで治療法を設計できる可能性がある。さらに、この知識は、B細胞のサブセットが個別の機能を持つかどうか、あるいはサブセット間にクロストークがあるかどうかを理解するのに役立つかもしれない。例えば、腫瘍特異的抗体の産生と、抗原のT細胞への提示という2つの機能を1つのB細胞で行うことができるのだろうか? これらの研究の一部はヒト腫瘍で行うことができるが、詳細な機構を調べるには、自然に生じたTLSを含む生理学的に意義のあるモデルが必要だと考えられる。

今回の研究から、臨床的意義については、T細胞媒介免疫療法を補うものとして、B細胞応答を高める治療法の優先順位が高いことが示唆された。腫瘍抗原を標的とする改変T細胞を作製する現在の取り組みと同様に、特定の腫瘍抗原を標的とする改変B細胞を作製可能かどうかについても研究する必要がある。より一般的には、T細胞ベースの免疫療法を受けた後に、B細胞にTLSの形成を誘導させることで免疫療法が改善できるかどうかを調べる必要があるかもしれない。

以上のことから、今回の研究は、がんにおけるB細胞とTLSについて、今後の機構的な研究を推進する足掛かりになると考えられる。有効なB細胞特異的免疫療法を開発するためには、現在の治療法と、B細胞とTLSを利用する手法とをどのように組み合わせるかを理解することが重要だと考えられる。

(翻訳:三谷祐貴子)

Tullia C. Brunoは、ピッツバーグ大学(米国ペンシルベニア州)に所属。

参考文献

  1. Brahmer, J. R. et al. J. Clin. Oncol. 28, 3167–3175(2010).
  2. Cabrita, R. et al. Nature 577, 561–565 (2020).
  3. Petitprez, F. et al. Nature 577, 556–560 (2020).
  4. Helmink, B. A. et al. Nature 577, 549–555 (2020).
  5. Shimabukuro-Vornhagen, A. et al. Oncotarget 5, 4651–4664 (2014).
  6. Germain, C. et al. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 189, 832–844 (2014).
  7. Shalapour, S. et al. Nature 521, 94–98 (2015).
  8. DeFalco, J. et al. Clin. Immunol. 187, 37–45 (2018).
  9. Bruno, T. C. et al. Cancer Immunol. Res. 5, 898–907(2017).
  10. Kessel, A. et al. Autoimmun. Rev. 11, 670–677 (2012).
  11. Khan, A. R. et al. Nature Commun. 6, 5997 (2015).
  12. Sautes-Fridman, C., Petitprez, F., Calderaro, J. &Fridman, W. H. Nature Rev. Cancer 19, 307–325(2019).
  13. Affara, N. I. et al. Cancer Cell 25, 809–821 (2014).
  14. Shalapour, S. et al. Nature 551, 340–345 (2017).
  15. Ammirante, M. et al. Nature 464, 302–305 (2010).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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