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先延ばしを防ぐ支援ツール

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2019.191205b

課題ごとにご褒美ポイントでやる気引き出す。

すぐに満足を求めるか、それとも将来の利益のために我慢するか。この選択で人は近視眼的な決定をしてしまうことが多い。例えばジムに行くのではなくテレビを見続け、難しい課題に取り組まずにソーシャルメディアをスクロールする。「目の前のご褒美と長期的な価値をうまく評価できないため、長期的に見て自分にとって最善なことをするのがひどく難しい場合が多いのです」とマックス・プランク・インテリジェントシステム研究所(ドイツ・テュービンゲン)の認知科学者Falk Liederは言う。

Liederらは、各個人を最善の選択に導くためのデジタルツールを開発した。彼らが「認知補助装具」と呼ぶこのツールは、ある決定がすぐにもたらす利益と長期的な価値を人工知能によって比べ、「やることリスト」全てに対する人の意思決定を助けることができる。課題リストと各課題に対する個人の主観的な抵抗感、費やせる時間の量などさまざまな要素を考慮する一連のモデルとアルゴリズムを開発した。このシステムはユーザーに合わせて各課題にご褒美ポイントを割り当て、ユーザーが全ての課題を完了するように仕向ける。

「人が現実世界で行っている困難な取り組みをゲームのような環境に変えようというアイデアです。ご褒美ポイントは最も手近で達成可能な目標をユーザーに与え、ユーザーは自分が前進していることが分かります」とLieder。

2019年8月のNature Human Behaviour に報告されたこのAI支援システムは、被験者がより適切な意思決定を迅速に行うのに寄与し、物事の先送りが減った。また、与えられた課題を全て完了する率が高まった。被験者120人に複数の作文課題のリストを示した実験では、ツールを使った被験者の85%が全課題を完了したのに対し、ツールを使わなかった被験者では56%にとどまった。

Liederによれば、現在のツールを、より多くの課題項目に対応できるようスケールアップを図っている。同時にComplice社という企業と共に、このツールを既存のタスク管理アプリに組み込む作業を進めている。この認知補助装具が現実世界の環境でどれほど有効かも調べられる予定だ。

(翻訳:鐘田和彦)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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