News

ミツバチは「ゼロ」が分かる

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 8 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180807

原文:Nature (2018-06-07) | doi: 10.1038/d41586-018-05354-z | Honeybees can count to zero

Giorgia Guglielmi

ヒトやイルカのように「ゼロ」の概念を理解できることが判明している動物はごく少数だが、意外にもそこに昆虫が仲間入りした。

どうやらミツバチは、「何もない」といった抽象的な観念を理解できるようだ。 | 拡大する

Anand Varma/Getty

ミツバチは「何もない」と「何かがある」を区別できるようだ1。しかも、ゼロを正の整数列の最下端に位置付けることもできる。これまでの研究から、セイヨウミツバチ(Apis mellifera)は最大で4個の物体まで数えられることが明らかになっている2。今回の研究は、ミツバチが抽象的な概念を把握できることを初めて示唆したものだと、ロンドン大学クイーンメアリー校(英国)の行動生物学者Lars Chittkaは話す。「私はこれまで何度も、ハナバチ類に見られるどの知的行動も意外なものではないと言ってきましたが、今回の報告は、そんな私にとっても驚きでした」。彼は2017年に、マルハナバチが仲間の行動を見て、サッカーを学習できることを示した3(2017年5月号「ハチは仲間のプレーでサッカーを覚える」参照)。

今回の研究では、ミツバチが「何もない」という概念を理解できるか調べるため、自由に飛行するミツバチを、黒い模様が2〜5個描かれたカード2種類を掲示したついたてに飛んで行かせた。一部のミツバチには、模様の数が少ないカードに飛んで行った場合に甘い水を一滴与え、残りのミツバチには、数の多いカードを選んだ場合に甘い水を与えた。この訓練を1日行った後、模様が1個、または白紙のカードを選択肢として組み込んだ。すると、ミツバチは一貫して、白紙のカードを「模様の数が最も少ないカード」として認識できた。白紙のカードと、4~5個の模様のあるカードを一緒に提示した課題では、成績がさらに上がった。

「ミツバチは、数と数の間に『距離』があることを理解しています。これは、ゼロの理解の非常に重要な段階の1つです」と、この論文の筆頭著者であるRMIT大学(オーストラリア・メルボルン)の生物学者Scarlett Howardは話す。

数を把握する能力がミツバチに生まれながらに備わっているのか、訓練によるものなのかは、まだよく分からないとHowardは言う。いずれにしても、数のルールを理解し応用する能力によって、移動経路の確認・決定や、さまざまな花の特徴の識別などが可能になり、自然界で生きる上で有利になったのではないかとHowardは話す。

研究チームは現在、訓練したミツバチと未訓練のミツバチの脳を詳しく調べ、ニューロンが「何もない」という概念の情報をどのように処理しているかを解き明かそうとしている。

(翻訳:船田晶子)

参考文献

  1. Howard, S. R., Avarguès-Weber, A., Garcia, J. E., Greentree, A. D. & Dyer, A. G. Science 360, 1124–1126 (2018).
  2. Skorupski, R. et al. Phil. Trans. R. Soc. B 373, 20160513 (2017).
  3. Loukola, O. J., Perry, C. J., Coscos, L. & Chittka, L. Science 355, 833–836 (2017).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

プライバシーマーク制度