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警戒する植物

植物は逃げも隠れもできないので、動物に食べられるのを避けるには別の戦略が必要だ。動物にかじられたり卵を産みつけられたり、襲撃の確かなシグナルを検知すると、葉を丸める植物や、味をまずくする化学物質を大量生産する植物がある。今回、一部の植物は襲撃のずっと前に草食性動物を検知できることが示された。先んじて防御策を発動し、それが別の敵に対しても働くという。

ウィスコンシン大学マディソン校(米国)の生態学者John Orrockが、カタツムリがはうときに出す潤滑性の粘液を土壌に注入したところ、近くのトマトの苗木は、それに気付いたようだった。草食動物を阻止することが知られているリポキシゲナーゼという酵素の量が増えたのだ。「襲撃を示唆する手掛かりを与えただけで、植物の化学成分に大きな変化が生じたのです」とOrrockは言う。

Orrockは以前、この防御法がカタツムリに対して働くことを確かめている。そして最近の研究で彼らは、このカタツムリ粘液の警告によって植物がカタツムリ以外の別の脅威に備える効果を調べた。その結果、トマトがカタツムリ粘液にさらされて化学的防御を発動した後には、トマトの葉を食べる毛虫がこれを食べなくなることが分かった。

この不特定の防御は、生き残りの確率を高めるという成果を最大限に獲得しようとする戦略なのだろうとOrrockは言う。2018年3月のOecologiaに報告。

どのように検出?

カタツムリの接近が植物に他の動物に関する反応を引き起こすというこの発見に、カリフォルニア大学デービス校(米国)の植物コミュニケーションの専門家Richard Karbanは関心を持った(今回の研究には関わっていない)。「植物が実際のダメージを受けていないのに反応していること、そしてその警戒信号がこのように広範囲に影響していることは重要です。ただ、トマトの苗は、実際には触れていないカタツムリ粘液の化学物質をどのように検出しているのでしょう」とKarbanは言う。

「それは極めて難しい質問です」とOrrockは言う。遠くの手掛かりの検知を植物に可能にしている機構が、今後の研究で解きほぐされていくことを彼は期待している。

翻訳:粟木瑞穂

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 6

DOI: 10.1038/ndigest.2018.180605b