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翼竜は生まれてすぐには飛べなかった?

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180311

原文:Nature (2017-12-07) | doi: 10.1038/nature.2017.23049 | Huge haul of rare pterosaur eggs excites palaeontologists

John Pickrell

中国で、立体構造を維持した翼竜の卵の化石が数百個見つかった。中には胚が保存されたものもあり、その骨の特徴からは、孵化したばかりの幼体は飛べなかった可能性が示唆された。

215個に上るハミプテルスの卵とそこに含まれていた胚の化石は、孵化直後の翼竜の姿を垣間見せてくれる。 | 拡大する

ZHAO CHUANG

「翼竜」は、動力飛行(羽ばたき飛行)を進化させた最初の脊椎動物として知られるが、その初期の生活史については長く謎に包まれてきた。この空飛ぶ爬虫類が卵を産んでいたことが確認されたのは2004年になってからで、その後も卵の化石は少数しか見つかっていなかった。今回、中国西北部・新疆のトルファン・ハミ盆地で新たに発見された、前期白亜紀(約1億2000万年前)の翼竜「ハミプテルス・ティアンシャネンシス(Hamipterus tianshanensis)」の卵の化石は、数が数百個に上るだけでなく、保存状態が良好で、立体構造を維持した胚も多数含んでいた点が注目されている。これらの化石の特徴からは、翼竜が生まれてすぐには飛べなかった可能性や、集団で営巣していたと見られることが示され、この成果はScience 2017年12月1日号で報告された1

中国科学院古脊椎動物古人類研究所(北京)のXiaolin Wang(汪篠林)らは、2006年から10年がかりで約3m2の大きさの板状の砂岩層を発掘し、散乱したハミプテルスの骨と混在する、少なくとも215個の卵の化石を見いだした。これらの化石をコンピューター断層撮影(CTスキャン)や入念なクリーニングを行って観察したところ、42個の卵に内容物が認められ、そのうち16個には胚の化石が含まれていることが分かった。胚の発生段階は同じでなく、いくつかの異なる段階に分けられた。

リンカーン大学(英国)で鳥類と爬虫類の生殖を研究するCharles Deemingは、Science同号に掲載された解説記事2で、今回の発見を翼竜研究における「重大な進歩」だと評価している。ポーツマス大学(英国)で爬虫類を研究するMark Wittonは、「ハミプテルスが、最も完全な知見が得られている翼竜の仲間入りを果たせる可能性が出てきました」と語る。

今回発見された卵の数々は、特定の方向性を持たずに集積していることなどから、嵐による雨などでまとめて流され、湖に行き着いて化石化したものと推測された。また、卵のサイズや胚の発生段階が多様なため、複数の巣の卵が混ざったものと考えられた。Wangらは、これらの知見はハミプテルスが集団営巣していたことを強く示唆していると主張する。

飛べたのか?

胚の骨の詳細な分析からは、ある意外なことが明らかになった。これまで、翼竜は孵化の直後から飛んでいたと考えられていた。ところが今回発見された胚では、大腿骨は関節に至るまで十分に発達していたのに対し、飛行に必要となる前肢を構成する骨は、骨化はしていたものの関節などは形成されていなかった。これは、後肢の発達が前肢に比べて著しく速かったことを示唆している。Wangらは、「孵化直後のハミプテルスの幼体は、地上を歩き回ることはできても、空を飛ぶことはできなかった」と結論付けた。

しかし、Wittonは納得していない。彼は、翼竜の多くが孵化時にはすでに十分発達した翼を持っていたと考えており、翼の骨が未発達に見えるのは、構造の一部が軟骨でできていたために化石化しなかっただけではないか、と指摘する。「翼竜の孵化時の体重はわずか数gだったでしょうから、軟骨でも強度は十分だったはずです」とWittonは言う。

Wittonらは、2017年9月に英国バーミンガムで開催された古脊椎動物学・比較形態学シンポジウムで、別の翼竜2種の孵化幼体の化石に関する研究成果を発表し、これらの幼体の翼の骨は十分に発達しており、生まれてすぐに飛べたと見られると結論している3

Deemingもまた、今回のデータセットはまだ限定的であるとし、あまりに多くを推測すべきではないと警告する。Wangらが分析したハミプテルスの胚は、孵化までまだ時間があった可能性もあるからだ。今回の論文の共著者であるブラジル国立博物館(リオデジャネイロ)の古生物学者Alexander Kellnerは、新疆で現在発掘が進められている他の卵の化石が、今後空白の一部を埋めてくれるだろう、と期待する。「異なる発生段階の胚を見つけ、全体的な発生の流れを解明したいですね」とKellnerは語る。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. Wang, X. et al. Science 358, 1197–1201 (2017).
  2. Deeming, D.C. Science 358, 1124–1125 (2017).
  3. Witton, M. P., Martin-Silverstone, E. & Naish, D. PeerJ Preprints 5, e3216v1 (2017).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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