靴紐が解けてしまう謎が解けた
Oliver OʼReillyは、娘に靴紐の結び方を教えているときに、ふとあることに気付いた。靴紐は突然解けるが、自分はその理由を知らない。どうやら、他の人たちも知らないようだ。
カリフォルニア大学バークレー校の機械工学者である彼は、2人の同僚を引き込んで、理由の解明に乗り出した。彼らが4月12日に発表した論文では、靴紐に作用する力の組み合わせによって、結び目が突然解けることが報告されている(C. A. Daily-Diamond et al. Proc. R. Soc. A http://doi.org/b5p5;2017)。
科学者たちは当初、結び目はゆっくり解けていくのだろうと予想していた。しかし、ランニングマシンの上で走る人の靴紐の動きをスローモーションで撮影したビデオ映像から、結び目はわずか1、2歩の間に急速に解けることが明らかになった。その理由を明らかにするため、OʼReillyらは結び目に作用する力を測定した。その結果、歩行中に靴紐にかかる衝撃と加速度は合計7Gにもなることが明らかになった。7Gといえば、アポロ宇宙船が地球の大気に再突入したときの加速度とほぼ等しい。
さらなる実験により、その場で足踏みをしているだけでも、前後に足を振っているだけでも、結び目は解けないことが明らかになった。つまり、結び目を解くには2つの力が組み合わされる必要がある。繰り返される衝撃により結び目が緩み、向きの変化により靴紐が引っ張られるのだ。
カーネギー・メロン大学(米国ペンシルベニア州ピッツバーグ)の機械工学者Khalid Jawedは、結び目が解ける理由に対しては、純粋に学問的な興味以上のものがあると言う。
Jawedによれば、靴紐を結ぶときの蝶結びや縦結びは、「三葉結び目」と呼ばれる最も単純な結び目からできているという。靴紐に限らず、最もよく使われている結び目は、三葉結び目を組み合わせただけのものだ。「単純な結び目がどのように機能し、どのように解けるかを理解することができれば、より複雑な結び目を理解することができます」と彼は言う。
こうした知見は、手術時に用いられる「外科結び」を改良したり、海底に敷設された光ケーブルがもつれて破損する理由を解明したりするのに役立つだろう。また、髪の毛は紐や結び目と同じようにねじれたり動いたりするため、CGアニメーターは髪の毛の動きをより自然に描写できるようになるだろう。
OʼReillyは人々に、次に紐靴を履いて歩いたり走ったりするときには自分で実験してみることを勧めている。いろいろな方法で靴紐を結んで、その具合を観察するのだ。ただし、つまずかないように気を付けて!
翻訳:三枝小夜子
Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 7
DOI: 10.1038/ndigest.2017.170718
原文
Unravelling why shoelace knots fail- Nature (2017-04-20) | DOI: 10.1038/nature.2017.21815
- Erin Ross
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