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アザラシの時間感覚

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170207a

1秒足らずの違いをちゃんと識別

毎日のスケジュールや季節的サイクルに従って行動する動物は数多いが、彼らは短時間の区別、例えば3秒と13秒の区別ができるのだろうか? マルハナバチやハト、ネコなどが、ある程度の精度で時の経過を認識していることは知られている。ロストック大学海洋科学センター(ドイツ)の生物学者Frederike D. Hankeは長年にわたる捕獲アザラシの研究の結果、アザラシも時間認識が可能らしいことを見いだした。

Hankeの研究チームは同センターで飼育している11歳のゼニガタアザラシ「ルカ」で、この仮説を検証した。パソコン画面の黒い背景に白い円を3~30秒間映し、いったん消してから再び映した。ルカには、2度目に円が映った時間が1度目よりも長いと思ったら片方のボタンを、同じ長さだと思ったら別のボタンを押すように教え込んだ。そして正解した場合には、ご褒美においしいニシンを与えた。

この結果、ルカはわずか420ミリ秒の違いを検知できることが分かった。つまり、3秒間の表示と3.42秒間の表示を区別できたのである。ただし円の表示時間を長くすると、両者を区別する精度は落ちた。先頃のAnimal Cognitionに掲載されたこの実験結果は、鰭脚類動物の時間測定能力を報告した初の例だ。

アザラシがこの技能を進化させたのは、魚を追っている際に素早い判断を下すため、あるいは他のアザラシがさまざまな時間間隔で発した声を識別するためだろうとHankeは話す。Hankeは実験を他のアザラシに広げるとともに、視覚刺激の代わりに音響刺激を用いた実験も計画している。

鰭脚類の認知能力を研究しているニューカレッジ・オブ・フロリダ(米国)の心理学者Peter Cookは、ルカがこの課題を簡単に学習したことに驚いている。こうした精神物理学実験では動物に多くの訓練が必要になるのが普通だが、ルカは2回の訓練セッションで要領を習得した。

「非常にわずかな時間的違いだが、アザラシにはその差が実にはっきりと分かっているのです。この時間感覚が非常に強固でよく調整されたものであることを強く物語っています」とCookは言う。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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