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薄暗い海を彩る色とりどりの蛍光サンゴ

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2015.150905

原文:Nature (2015-06-24) | doi: 10.1038/nature.2015.17840 | Radiant reefs found deep in the Red Sea

Allie Wilkinson

太陽光がわずかにしか届かない中深度の海で、黄色や橙色、赤色に輝く蛍光サンゴが発見された。これらのサンゴは自ら光ることで、共生藻類に足りない光を補充しているのかもしれない。

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Jörg Wiedenmann

紅海の水深約50~60mという中有光層(太陽光がわずかに到達する水層)で、黄色や橙色、赤色に蛍光するサンゴが発見され、科学者たちを驚かせている。

この珍しい色彩を持つ中有光層サンゴ礁の発見は、2015年6月24日、サウサンプトン大学(英国)の分子生物学者Jörg WiedenmannらによってPLoS ONEに発表された1。Wiedenmannは「この深さに生息するサンゴにこれほど多様な蛍光色が見つかったのは初めてです」と語る。

浅海のサンゴには緑色に光るものがあることが知られている。造礁サンゴ(サンゴ礁を形成するサンゴ)には、光合成を行い「食物」を与えてくれる褐虫藻が共生しているが、緑色光を放つこれらのサンゴでは、光のもとである蛍光タンパク質は、有害な紫外線を吸収することで褐虫藻を保護するという、いわば遮光剤の役割を果たしている。吸収された紫外線は、その後よりエネルギーの低い緑色光として放射される。一方、水深30~150mの中有光層では、強烈な紫外線を浴びる心配はないものの、褐虫藻が光合成に利用できる太陽光は著しく減少する。つまり、こうした場所のサンゴが赤色や黄色、橙色に光るのは、褐虫藻が利用できる光を増やすためと考えられる。「中有光層のサンゴは、蛍光タンパク質によって光環境を改善しているのでしょう」とWiedenmannは話す。

今回発見された蛍光サンゴの試料を実験室に移動したところ、その一部は完全な暗闇でもなお蛍光色素を産生し続けた。この結果は、これらの色素が、サンゴが弱光条件に対処するのに一役買っているという説を支持している。

紅海の中有光層サンゴからは極めて多様な赤色蛍光タンパク質が見つかっており、天然蛍光色素の新たな供給源として期待が膨らむ。蛍光色素は、生物医学研究におけるイメージング技術のマーカーとして非常に有用なのだ。類似の蛍光サンゴの研究はハワイでも行われているが、ハワイのサンゴからは青緑色と緑色の蛍光タンパク質しか見つかっていない2。波長の長い赤色光が細胞や組織の透過性に優れていることを考えると、紅海のサンゴの赤色蛍光タンパク質がいかに有用か分かるだろう。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. Eyal, G. et al. PLoS ONE 10, e0128697 (2015).
  2. Roth, M. et al MEPS 521, 63–79 (2015).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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