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レーザー核融合で投入エネルギーを上回るエネルギーを生成

Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140406

原文:Nature (2014-02-12) | doi: 10.1038/nature.2014.14710 | Laser fusion experiment extracts net energy from fuel

Philip Ball

米国の国立点火施設で行われた実験で、核融合炉の実現に向けて重要で画期的な段階が達成された。

内部にカプセルを組み込んだ金ホーラムターゲット。

Credit: LLNL

米国カリフォルニア州にあるローレンスリバモア国立研究所の国立点火施設(NIF)は、実験室での制御された核融合反応で、反応を引き起こすために燃料に投入したよりも多くのエネルギーを反応で得ることに世界で初めて成功したと発表した。この成果は2014年2月12日にNatureオンライン速報版に掲載された1

核融合は、実現すれば、事実上、無限ともいえるエネルギー源となる技術だ。NIFの研究者らは今回、世界で最も高出力のレーザー集合体を使い、燃料エネルギー利得(核融合反応で得られたエネルギーを外から燃料に与えたエネルギーで割った値)が1を超える核融合反応を達成した。この段階は重要で象徴的であるものの、核融合による発電を実現するまでの道のりは長い。炉としてエネルギーを取り出すためには、「点火」を達成する必要があるからだ。

核融合反応を起こすためには、重水素などの核融合燃料を高温のプラズマ(電離気体)にする必要がある。そして、核融合反応で生じるエネルギーがプラズマから逃げるエネルギーを上回るとき、反応が持続し、これを「点火」と呼ぶ。核融合は長年にわたって研究されているものの、点火は今回の達成よりもはるかに難しく、その実現にはまだ遠い。

とはいえ、サンディア国立研究所(米国ニューメキシコ州アルバカーキ)のMark Herrmannは、「今回達成されたことは、点火に至る道のりにおいて決定的に重要な段階です」と話す。Herrmannは、同研究所の高エネルギーX線パルスを研究するプロジェクトのリーダーで、NIFでの研究には加わっていない。

核分裂では、ウランなどの非常に重い原子核の分裂の際に放出されるエネルギーを利用する。一方、核融合は、恒星や熱核爆弾(水素爆弾)のエネルギー源であり、水素原子核などの軽い原子核が合体する際、合体前の水素原子核の質量のごく一部がエネルギーに変わる。

核融合を制御して実現することは非常に難しい。その理由の1つは、核融合を起こすために数千万℃の高温にしたプラズマを閉じ込めるのが難しいことだ。世界各地で行われている核融合研究プロジェクトでは、プラズマのさまざまな閉じ込め方法が研究されている。例えばフランス南部に建設中の国際熱核融合実験炉ITERは、ドーナツ型の炉の中で磁場でプラズマを閉じ込める方法を研究している。

レーザーパルスの形を工夫

原子核を電磁気力による反発に打ち勝って互いに近づけるためには、大量のエネルギーを注入しなければならない。NIFでは、192本の高出力レーザーによってこのエネルギーを供給している。NIFが用いる燃料は重水素と三重水素で、「ホーラム(hohlraum)」と呼ばれる円筒形の金の容器(長さ約9.4mm、直径約6mm)の中のプラスチック球殻(直径約2.3mm)に封入されている。レーザービームは、このホーラムに注入される。

レーザーのエネルギーはホーラムに吸収され、ホーラムは吸収したエネルギーをX線として再放射し、その一部がプラスチック球殻に吸収される。プラスチック球殻は爆発し、内部の燃料を爆縮して核融合を引き起こすほどの高密度にする。

NIFチームは、2013年9月から同年11月にかけて行われた実験で今回の結果を得た。研究チームはレーザーパルスの形を工夫し、パルスの初期段階により多くのエネルギーを含むようにした。この改良によって、一連のプロセスの初期段階でホーラム内の温度が比較的高くなり、プラスチック球殻を膨らませる効果を生んだ。この結果、核融合反応の妨げになる、爆発時の流体力学的な不安定性が減少した。ローレンスリバモア国立研究所(米国カリフォルニア州リバモア)の物理学者で、研究チームのリーダーであるOmar Hurricaneは、「プラスチック球殻が膨らむことで、不安定性の成長が大きく遅れるのです」と説明する。

その結果、燃料エネルギー利得を1.2〜1.9にすることができた。「これは、実験室での核融合実験でこれまでに実現されたことがない値です」とHerrmannは話す。さらに彼は、「得られたエネルギーの多くは、核融合反応で放出されたα粒子による燃料の自己加熱によるものです。これは、核融合反応を持続させるために重要な必要条件です」と付け加えた。

しかし、核融合による発電はまだ遠い目標のままだ。Hurricaneは、「核融合発電の実現までにあとどれだけの期間を要するのか、現時点で見積もることはできません。私たちの実験での総計の利得、つまり、核融合反応で得られたエネルギーを、ホーラムに投入した全レーザーエネルギーで割った値は約1%にすぎないのです」と話す。

(翻訳:新庄直樹)

参考文献

  1. Hurricane, O. A. et al. Nature http://dx.doi.org/10.1038/nature13008 (2014).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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