The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。

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陽子半径の見直し

Nature 575 2019年11月7日

陽子電荷半径の値はいくつなのか。2010年から議論が続いていることから明らかなように、この一見したところ単純な質問に対する簡単な答えはなく、これは「陽子半径問題」と呼ばれることがある。ミューオン水素の分光測定から、陽子電荷半径の値は、電子–陽子散乱実験と水素の分光測定を通して以前に見いだされた値よりも小さいと報告されたことで、過去のデータを再検討し、理論的な枠組みを改善するとともに、より高精度でモデルにあまり厳しく依存しない新たな測定を行う必要性が明らかになった。今回、米国ジェファーソン研究所のPRadコラボレーションが、陽子電荷半径を決定する最新の電子散乱実験の結果を報告している。今回見いだされた値は、ミューオン水素の研究と一致しており、これによって、同様に高精度の電子–陽子散乱を使った研究で以前に得られていた値よりも小さな半径が裏付けられた。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-03364-z

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1721-2

2

銅酸化物超伝導体を二次元にする

Nature 575 2019年11月7日

非従来型超伝導体である銅酸化物は層状物質であり、こうした銅酸化物群においては超伝導の準二次元性が十分実証されている。しかし、極めて薄い膜であっても銅酸化物の超伝導特性が影響を受けないことを示す明確な証拠はない。今回Y Zhangたちは、銅酸化物の単層を剥離し、試料の劣化を最小限にすることで、銅酸化物の電子特性は二次元になっても変化しないことを実証している。剥離された単層を用いれば、(化学ドーピングを用いる代わりに)ゲートによって制御される電荷キャリア密度の関数として銅酸化物の物理を調べることができる可能性がある。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1718-x

3

羽ばたく鳥型ロボット

Nature 575 2019年11月7日

磁場制御は、テザーなしで小型ロボットを操作する最も有望な方法の1つである。しかし、そうしたロボットを操作して2種類以上の運動を行わせるには、複雑な磁場か、ロボットの磁気部品の注意深い制御が必要だが、いずれも小さなスケールでは特に困難である。今回J Cuiたちは、ナノ磁石を埋め込みヒンジで連結されたパネルでできた、さしわたしが100 μmに満たないマイクロマシンを開発している。個々のパネルには異なる形状のナノ磁石があるため、磁場強度を変えることによって複数の作動モードを実現できる。この能力は、翼を羽ばたかせたり、首や尾を曲げたりすることのできる極めて小さなロボットの「鳥」で実証されている。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-03363-0

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1713-2

4

そこは「エデンの園」だったのか

Nature 575 2019年11月7日

現生の全ての人々の祖先の発祥の地と考えられる場所は、ボツワナ北部の地域である。この地域は、現在は乾燥した塩生砂漠だが、約20万年前まではマカディカディ湖という当時アフリカ最大の古湖(面積は現在のビクトリア湖の2倍)があった。そして約20万年前、気候の乾燥化によってマカディカディ–オカバンゴ古湿地へと変貌し、乾燥の進んだ土地に囲まれた豊かなオアシスとなった。それはちょうど、解剖学的現生人類がそこで足掛かりを得た時期であった。その後、解剖学的現生人類は7万年間にわたってこの地にとどまり、約13万年前になってようやく(より穏やかな気候を利用して)外の世界へと移動し広がっていった。その先は先史時代が示すところである。A TimmermannとV Hayesたちは今回、この成り行きを気候の再構築から組み立てたが、その根拠の大部分はミトコンドリアDNAの解析に基づいている。現生人類のミトコンドリアゲノム(ミトゲノム)で最も古く分岐したのは、現在もこの地方に居住しているコイサン族に由来するL0系統のものである。現代人のミトゲノムに関する既存の情報を、新たに得られた情報資源と合わせて用いることで、L0系統の歴史および分岐の状況が再構築され、この系統がどこで出現し、その後どこへ移動したのかが明らかになった。こうして、L0系統が約20万年前にアフリカ南部で出現したという新たな知見が得られた。この年代は、従来の推定を5万~2万5000年さかのぼるものである。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1714-1

5

成功と失敗を予測する

Nature 575 2019年11月7日

偉大な業績の多くは失敗を繰り返した後に達成される。今回D Wangたちは、成功へとつながる失敗のダイナミクスを定量化する明快で単純なモデルを考案した。そして、米国立衛生研究所(NIH)への助成金申請、新規事業投資、テロ攻撃という3つの異なる領域において、繰り返される取り組みについての非常に大きなデータセットにそのモデルを適用した。その結果、成功と失敗の動態を区別する相転移が明らかになり、最終的に成功する人と成功しない人の歩みに関する検証可能な予測が得られた。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1725-y

6

厄介ものを取り除く

Nature 575 2019年11月7日

ハンチントン病は、ハンチンチンタンパク質(HTT)をコードする遺伝子の変異が原因である。この変異は、ハンチンチンタンパク質中のポリグルタミン反復配列の伸長や、それに関連する毒性の機能獲得を引き起こす。この変異が見つかったのは25年以上前だが、ハンチントン病はいまだに治癒が見込めない疾患である。変異タンパク質レベルを低下させることは、治療法として有望そうだが、正常なHTTは生存に必要であるため、どのような治療法であれ、対立遺伝子特異的でなければならないと予想される。Z Liたちは今回、変異型HTTを一掃するための新たな方法を報告している。彼らは、変異型HTTと、オートファジーに密接に関わっている分子LC3の両方に結合する小分子のスクリーニングを行い、この2つを連結する化合物を複数見つけ出した。これらは正常なHTTや基礎レベルのオートファジーは変化させずに、変異型HTTのオートファジーを選択的に増加させる。マウスの初代培養ニューロンやヒトiPSC、ハンチントン病のショウジョウバエモデルやマウスモデルで概念実証がなされた。この独創的な新手法は、もっと広く、少なくとも他のポリグルタミン疾患に対しては、適用できる可能性がある。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-03243-7

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1722-1

7

転移性腫瘍の全がん全ゲノム解析

Nature 575 2019年11月7日

E Cuppenたちは今回、転移性固形腫瘍の大規模な全がん全ゲノム研究について報告している。これらのゲノムデータには、正常組織試料と腫瘍組織試料の対2520組についての全ゲノム塩基配列解読データが含まれる。転移性がんゲノムの変異全体像を調べたところ、原発腫瘍と類似した変異全体像とドライバー遺伝子が見られることが明らかになった。著者たちはまた、今回のコホートで、全試料横断的に個々の患者レベルのドライバー変異候補カタログを作製し、臨床的に重要な関連性を評価するための手法も実行している。今回の研究で得られた情報資源は、原発腫瘍の全ゲノム塩基配列の情報資源を補完するものである。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-019-03123-0

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1689-y

8

変異型KRAS阻害剤の最初の臨床活性

Nature 575 2019年11月7日

今回、発がん性のKRASを標的とする新しい変異型特異的阻害剤AMG 510の開発が報告されている。KRAS変異は肺、大腸、膵臓の腫瘍の重要なドライバーである。AMG 510はKRASG12Cマウスモデルで前臨床活性を示し、化学療法や分子標的薬との相乗効果が見られた。用量漸増試験でこの阻害剤の投与を受けた2人の肺がん患者でも、奏功を伴う臨床活性が認められた。さらに、この阻害剤は大腸がんのマウスモデルで炎症性環境を誘導し、免疫チェックポイント阻害の効果を増強した。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1694-1

9

腸内微生物群を免疫で武装

Nature 575 2019年11月7日

微生物が高密度で存在する腸内環境では、細菌は隣接する細菌からの攻撃を防ぐ必要がある。J Mougousたちは今回、同じ種あるいは異なる種のVI型分泌装置(T6SS)が分泌する毒素に対して作用する、免疫遺伝子のクラスターが関与する新しい防御戦略を特定した。この細菌間防御系は、バクテロイデス属(Bacteroides)の種の間で広く見られると考えられ、この系が種間を移動できることによって、in vitroおよびマウスで毒素に対する抵抗性の移動が起こる。これらの後天性細菌間防御(AID)遺伝子クラスターは、腸内微生物相の生態学的相互作用を形作るのに重要であると予測される。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1708-z

10

2つの顔を持つ巨大複合体

Nature 575 2019年11月7日

DNA鎖間の架橋を修復する際の重要な段階の1つが、ファンコニ貧血(FA)コア複合体によるFANCD2–FANCI複合体のモノユビキチン化である。今回L Passmoreたちは、メガダルトン級のこのFAコア複合体の構造を明らかにしている。この複合体は中核にヘテロ三量体が作る二量体があり、そこにさらに5つのサブユニットが集合している。珍しいことに、2個のFANCLサブユニットは異なったコンホメーションをとっている。複合体のこの全体としての非対称性が機能的にどのような意味を持つのかを解明するには、さらに研究が必要だろう。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-019-1703-4

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