The Nature Top Ten アクセスランキング

Nature アクセスランキングでは、前月nature.comで、最もダウンロードが多かった記事や論文をランキングしています。日本サイトでは、一部日本語要約も掲載しております。ここにおけるランクは、論文・記事の質、科学的重要性、引用回数などを示すものではありません。人気のあったコンテンツをお楽しみください。

1

モアレ格子における相関トポロジカル相

Nature 579 2020年3月5日

二次元物質系モアレ格子では、相関電子相や磁気電子相が現れることがある。相関と磁性をトポロジカル相と組み合わせることによって、異常量子ホール効果などの観測が可能になる。今回F Wangたちは、グラフェン超格子の平坦なモアレバンドにおいて強相関から出現するトポロジカルチャーン絶縁体状態について報告している。彼らはさらに、垂直電場の印加によるトポロジカル不変量(チャーン数)の切り替えも実証している。今回の結果は、二次元物質のモアレエンジニアリングによって、相関相やトポロジカル相を含む凝縮物質においてさまざまな電子相の創成と制御が可能になることを示している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2049-7

2

超高速マシンビジョン

Nature 579 2020年3月5日

マシンビジョンは、自動運転車やロボティクスなどのインテリジェントシステムに不可欠な要素となっている。通常、視覚情報は、フレームベースのカメラによって捉えられ、デジタル形式に変換された後、人工ニューラルネットワークなどの機械学習アルゴリズムを用いて処理される。しかし、データをそうしたシグナルチェーンに通すと、フレームレートは低下し、消費電力は増大する。今回T Muellerたちは、人工ニューラルネットワークを自ら構成でき、リアルタイムで待ち時間なく光学画像のセンシングと処理を同時に行う画像センサーを実証している。このセンサーは再構成可能な二次元半導体フォトダイオードアレイで、教師あり学習と教師なし学習の両方を実行できる。著者たちは、このシステムを訓練して画像を分類・符号化した。今回のスケーラブルなプラットフォームは、超高速マシンビジョン用に二次元材料を使用できる可能性を示している。

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-00592-6

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2038-x

3

プレート内火山活動の深部の濡れた起源

Nature 579 2020年3月5日

中国北東部に広範に広がるプレート内火山活動や、日本海溝沖の特異な「プチスポット」火山の起源を説明するのは難しい。今回J YangとM Faccendaは、この火山活動が、沈み込む太平洋スラブと水を含む遷移層の相互作用に起因している可能性があると提案している。彼らは、地球ダイナミクスモデルを提示し、観測される火山活動を再現するには、停滞プレートの沈み込みと後退に応答して遷移層から放出される、マントル鉱物に溶解した少量の水で十分であることを立証している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2045-y

4

島嶼の鳥類で裏付けられた島嶼生物地理学の理論

Nature 579 2020年3月5日

MacArthurとWilsonは1963年、定着、種分化、絶滅の種の多様性の蓄積への寄与は生息地の面積と隔離度に依存する、とする島嶼生物地理学の理論を提唱した。今回L Valenteたちは、島嶼の鳥類における、この理論の全球規模での検証について報告している。彼らは、世界各地の41の海洋群島の陸生鳥類相に基づいて、島嶼鳥類の定着および種分化の時期に関する全球的な分子系統学的データセットを構築した。そして、定着、種分化、絶滅の島嶼特異的な速度の島の面積および隔離度への感度を推定する動的モデルを開発することで、定着が隔離度の増大に伴って減速し、絶滅が面積の増大に伴って減速し、種分化が面積および隔離度の増大に伴って加速することを見いだした。これらの結果は、島嶼生物地理学理論の重要な予測を裏付けている。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2022-5

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-00426-5

5

ヒトの歩き方

Nature 579 2020年3月5日

ヒトが二足でうまく歩行できる理由の1つは、ヒトの足がまるで板バネのように高い剛性を有することにある。つまり、力が加えられると曲げ抵抗が働くのである。これは、脚と地面の間で伝達される力が効率的に結合することを意味する。この特徴は一般に、踵と母指球の間の足底が地面に接しないようにしている顕著なアーチ形状である内側縦足弓(内側縦アーチ;MLA)と関連付けられている。しかし、MLAが足の剛性の総合的な測定結果と必ずしも相関しないという問題も指摘されている。一方で、MLAと直交する足根横足弓(足根横アーチ;TTA)はこれまで検討されてこなかった。今回M Venkadesanたちは、実験とモデリングの両方を用いて、TTAがいかにしてMLAとともに進化してきたか、そしてそれがヒトの歩行にどのように寄与しているのかを明らかにしている。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2053-y

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-00472-z

6

血管が骨の修復に影響を及ぼす

Nature 579 2020年3月5日

骨の修復は骨格前駆細胞によって開始される。骨格前駆細胞は、最初に血管を持たない軟骨の鋳型を形成し、これが後に骨に置換されるのである。G Carmelietたちは今回、骨の治癒過程における局所的な血管の利用可能性が、細胞外脂質の利用可能性の制御を介して、骨格前駆細胞の運命を決定することを明らかにしている。脂質が不足すると、骨格前駆細胞はFOXO転写因子群を活性化し、これが軟骨形成転写因子SOX9の発現を上昇させる。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2050-1

7

健康な老化を妨げるもの

Nature 579 2020年3月5日

線虫の一種Caenorhabditis elegansにおけるゲノム規模のRNA干渉スクリーニングにより、健康な老化の障害となる、保存されたエピジェネティック調節因子が明らかになった。今回S Caiたちは、2つの抑制性エピジェネティック因子であるBAZ-2とSET-6が、核にコードされたミトコンドリアタンパク質の発現を抑制し、その結果、ミトコンドリア機能が低下して線虫の行動劣化が加速することを見いだしている。この機構は、培養条件下のマウスニューロンやヒト細胞でも保存されているようである。さらに、ヒトのデータベースから、これらの調節因子のヒトオルソログの前頭皮質での発現レベルは加齢とともに上昇し、アルツハイマー病の進行とも相関することが分かった。マウスのBAZ-2オルソログを除去すると、加齢マウスにおいて加齢依存的な体重増加と認知機能低下が抑制された。これらの結果は、健康老化が、抑制性エピジェネティック因子を標的とする加齢関連ミトコンドリア障害の防止により改善できる可能性を示唆している。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2037-y

8

マウスにおいて明らかにされた微生物代謝物

Nature 579 2020年3月5日

微生物相によって産生された代謝物が、宿主の生理学的性質に顕著な影響を及ぼすことが次第に明らかになってきている。しかし、哺乳類の全身において、微生物相が関与する完全な化合物レパートリーやその多様性は明らかになっていない。P Dorresteinたちは今回、無菌マウスとSPF(specific-pathogen-free)マウスについて、29種類の器官の96部位から試料を採取し、新しい質量分析手法を用いた比較により、全身メタボロームの非標的評価を行った。その結果、微生物相は全ての器官の化学的性質に影響を及ぼし、メタボロームの2%(膀胱)から44%(糞便)に関与していることが分かった。彼らは、哺乳類ではこれまで検出されていなかった、フェニルアラニン、チロシン、ロイシンとの胆汁酸抱合体の存在を明らかにした。また、これらの新規胆汁酸が、in vitroでファルネソイドX受容体(FXR)のアゴニスト性リガンドとして機能し、in vivoではFXR シグナル伝達を調節する可能性があることも分かった。著者たちはさらに、ヒトのメタボロームデータセットを調べ、これらの独特な胆汁酸が炎症性腸疾患(IBD)や嚢胞性繊維症などの疾患状態で豊富に見られることを示している。今回の知見を裏付け、これらの新しい胆汁酸抱合体のヒト生理機能における重要性を調べるには、さらなる研究が必要である。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2047-9

9

アゴニストを内蔵するオーファン受容体

Nature 579 2020年3月5日

ヒトゲノム中に存在する約800種のGタンパク質共役受容体の大部分はリガンドによって活性化され、それがGタンパク質の活性化と下流のシグナル伝達へつながる。だが、Gタンパク質共役受容体のうちの100種以上は、内在性のリガンドがまだ知られていないオーファン受容体である。GPR52はオーファン受容体であり、脳でドーパミン受容体と共局在しているため、精神疾患やハンチントン病の治療標的候補と考えられている。今回F XuたちはGPR52について、オーファン受容体としては初めて、リガンドが結合していない状態、Gタンパク質と複合体を形成した状態、そしてリガンドの1つが結合した状態の構造を報告している。これらの構造から、受容体の細胞外ループの1つが分子に内蔵されているアゴニストとして働いていて、折りたたまれて典型的な結合ポケットに入り、受容体を活性化することが明らかになった。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2019-0

News & Views doi: 10.1038/10.1038/d41586-020-00411-y

10

二次元モアレ超格子における電子相関の量子シミュレーション

Nature 579 2020年3月19日

物質における強い電子相関によって、非従来型超伝導が生じる可能性がある。昨年、ねじれ2層グラフェンにおいてそうした相関状態が発見されてから、二次元モアレ超格子での強い電子相関が集中的に研究されている。格子上で相互作用する量子粒子に関するハバードモデルは、強相関系を記述する最も単純だが理論的に解くことのできないモデルの1つである。今回K Makたちは、遷移金属ジカルコゲニド・ヘテロ構造によって形成されたモアレ超格子において、二次元三角格子ハバードモデルを実現している。彼らは、電荷キャリア密度を増大させると弱い強磁性状態へ変化する、反強磁性挙動を示すモット絶縁体状態を観測した。今回の結果は、ハバードモデルや強相関物理の量子シミュレーション向けに新しい固体プラットフォームを提示するものである。

Article doi: 10.1038/10.1038/s41586-020-2085-3

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