Research press release

天文学:土星の衛星ミマスに地下海洋が存在することを示す証拠

Nature

クレーターのある氷の地表を持つ土星の衛星ミマス地下には、海洋が隠れている可能性があることを指摘した論文が、Natureに掲載される。土星探査機カッシーニから送られてきた観測データの解析から、ミマスの地下海洋は比較的新しく、今なお進化を続けていることが明らかになった。ミマスの研究を続けることで、氷天体の形成についてさらに多くの知識が得られるかもしれない。

一部の衛星の地表下に海洋が存在することを示す証拠が蓄積されてきているが、そうした海洋を検出することは難しい課題だ。土星の小衛星の1つであるミマスは、エンセラダスなどの他の氷衛星とは表面特性が異なるため、地下海洋を検出する対象の候補にはなりにくい。こうした考えに対して、カッシーニ探査機によるミマスの観測データを評価したValery Laineyらは異議を唱えている。

これまでの研究で、ミマスの内部に関して2つの可能性が示されていた。1つは引き伸ばされた形状の岩石コア、もう1つは全球的な海洋だ。今回のLaineyらによる解析では、ミマスの回転運動と軌道の変化が、この小衛星の内部の影響を受けていることが明らかになった。ミマスを固体とするモデルを採用するには、岩石コアが引き伸ばされ、ほぼパンケーキのような形状になっている必要があるが、これは観測結果と一致しない。ミマスの位置を測定した結果からは、ミマスの軌道進化が内部の海洋の影響を受けたものとする方がよりよく説明できると示唆される。Laineyらの計算によると、ミマスの地下海洋は、深さ約20~30キロメートルの氷の殻の下に存在している。また、シミュレーションから、この海洋が2500万~200万年前に出現したことが示唆されている。そのため、このような地下海洋の徴候が地表に痕跡を残す時間がなかったと考えられている。

Laineyらは、以上の結果は、ミマスにおける最近の過程が、他の氷天体の形成の初期段階に一般的に見られるものである可能性を示唆していると指摘している。同時掲載のNews & Viewsでは、Matija ĆukとAlyssa Rose Rhodenが、「Laineyらの今回の知見は、太陽系全体で中規模の氷衛星を徹底的に調べる意欲をかき立てることになるだろう」と述べている。

doi: 10.1038/s41586-023-06975-9

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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