Research press release

神経科学:マウスの新生仔の鳴き声に対する母親の応答を調べる

Nature

新生仔マウスの鳴き声に対する母親の応答の基盤にある神経回路について記述した論文が、Natureに掲載される。著者らは、これがマウスの母親による仔の保護を長期間持続させるための重要な機構になっているという考えを示している。

オキシトシンというホルモンは、母親の生理機能や行動にとって重要なことが知られており、例えば、分娩や授乳期間中の射乳に関与している。ヒトの場合、乳児の泣き声は乳児が苦痛を感じていることの強力なシグナルであり、授乳期間中の母親の大部分は、泣き声に対して、オキシトシン放出、視床下部活動の活発化、乳児を慰める行動といった応答を示し、時には射乳が起こる。しかし、助けを求める乳児の泣き声に関する聴覚情報をオキシトシンニューロンに伝達する神経回路は解明されていない。

今回、Robert Froemkeらは、乳児の泣き声が母親のオキシトシン放出を誘発する神経回路を調べるためにマウスの研究を行い、母親に新生仔の発声を聞かせて、オキシトシンニューロンの神経活動を記録した。その結果、オキシトシンニューロンは、視床の後髄板内核という脳領域からの入力を介して応答することが分かった。この神経回路は、オキシトシンの放出と新生仔の回収を制御することが判明し、仔からの感覚的手掛かりを母親のホルモンネットワークに組み入れて効率的な養育を促進するという機構が明らかになった。

今回の知見は、子からの感覚的手掛かりが神経回路によって処理されて、母親の行動を変化させるオキシトシンなどの神経調節物質の放出が活性化する過程を理解するために役立つ。

doi: 10.1038/s41586-023-06540-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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