Research press release

生態学:海洋の色は気候の傾向を反映している

Nature

過去20年間に海洋の色が変化しており、この変化傾向が、気候変動による海洋表層生態系の変化を示している可能性があることを示唆する論文が、今週、Natureに掲載される。海洋における生態学的特性や生物地球化学的特性の変化を高い信頼性で観測できれば、海洋保全プログラムの指針として使用できるかもしれない。

気候変動は、海洋生態系の構造や機能に変化をもたらしており、その影響は今後さらに大きくなると予想されている。光合成を行う植物プランクトンの緑色色素であるクロロフィルの濃度変化をモニタリングすることは、生態系の変化を測定する方法として検討対象になっている。しかし、気候による変化を検出するためには、クロロフィルのモニタリングを30年以上継続して行うことが必要だと考えられている。

今回、B. B. Caelらは、リモートセンシング反射率という代理指標を用いることで、海の色の変化の顕著な傾向を短期間の観測によって検出できることを報告している。リモートセンシング反射率は、海の色の尺度であり、これによってクロロフィルの濃度と生態系の状態を推定できる。リモートセンシング反射率の観測は、Aqua衛星に搭載されたMODISを使って20年間行われてきた。Caelらは、この期間中に観測された海洋の色の変化が気候変動によって引き起こされたという考えを示し、この色の変化が、プランクトン群集に生じた変化を反映している可能性が高く、このような変化が海洋生態系に影響を与えるかもしれないと付言している。そしてCaelらは、プランクトンが海洋の食物連鎖と炭素貯蔵において重要な役割を担っていることから、これらの生態系の変化を検出することが非常に有用だと結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-023-06321-z

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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