Nature ハイライト

Cover Story:尾にある仕掛け:T4バクテリオファージのゲノム注入機械の構造

Nature 533, 7603

表紙はT4バクテリオファージの尾部基盤の構造を示しているが、これはポリゴン数を減らす「low-poly」の技法を使いマニュアルで作製した画像である。T4バクテリオファージは、収縮性のある尾部を使ってファージゲノムを宿主である細菌細胞に注入する。この過程の中心となるのが、ファージの尾の末端にある尾部基盤である。N TaylorとP Leimanたちは今回、構造生物学の離れ業的手法で研究を行い、T4尾部基盤が宿主細胞へ接着する前と後のコンホメーションの原子モデルを低温電子顕微鏡を使って作製し、これらの2つの状態間の移行をもたらす一連の過程を分子レベルで初めて画像化した。尾部基盤と尾部の管の複合体は15種類のタンパク質に由来する145個のポリペプチド鎖からなり、この構造から尾部基盤が宿主の認識とシース(鞘)収縮を連動させる仕組みが明らかになった。尾部基盤の中心的な構成成分全ての構造と編成は広範囲にわたる細菌収縮装置中で保存されており、このような細菌の尾部基盤は同じような機構を使ってシース収縮を開始していると考えられる。

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