Nature ハイライト

Cover Story:耐えて生き残る:植物ストレスホルモンABAが行うシグナル伝達の構造的基盤

Nature 462, 7273

アブシジン酸(ABA)は主要な植物ホルモンで、乾燥や低温などのストレスから植物を守る働きをもち、気孔の開閉や種子の休眠といった日常的な応答の調節も行っている。ABA経路で受容体として重要なのはPYR/PYL/RCARファミリーのタンパク質であり、シグナル伝達の負の調節を行うのはABI1、ABI2、PP2Cというタイプ2プロテインホスファターゼである。今回、3組の研究グループが、ABAが結合していない状態のPYL、およびPYL2-ABA-PP2CやPYL1-ABA-ABI1など、さまざまな複合体の結晶構造を明らかにしている。構造から、疎水性のポケットを形成しているPYL/ABAがPP2CおよびABI1と結合することがわかり、生化学研究の結果と合わせてABAシグナル伝達の仕組みが示された(Articles pp.602, 609, Letter p.665)。Fujiiたちは、植物ホルモンとしては初めてin vitroでABAシグナル伝達経路を再構築し、主要な観察結果をin vivoで検証している(Letter p.660)。News & ViewsでL SheardとN Zhengが解説しているように、ABAの受容体の発見はずっと待たれていたものであり、ABAシグナル伝達の標的化には農芸化学的応用が期待される(p.575, www.nature.com/podcast)。表紙は、乾燥にうまく対処して頑張るマツヨイグサの仲間の植物、デザートプリムローズである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度