Nature ハイライト

Cover Story:深海におけるウイルスの影響:海底に生息する微生物へのウイルス感染は地球で最大の生態系の栄養源となっている

Nature 454, 7208

深海の堆積物は炭素の大きな貯蔵庫を微生物のバイオマスの形で内蔵しており、この生態系の動態は最近になってやっとはっきりしてきた。8月21日号のNatureに掲載された論文では、広範囲にわたる堆積物中の原核生物群集では、古細菌類のほうが細菌類よりも多いことが示された。今週号では、この生態系におけるウイルス感染の影響について、Danovaroたちが報告している。232の堆積物標品から得られたデータは、ウイルスによる生産が非常に高いことを示している。ウイルス感染は、原核生物バイオマス生産量の80%以上の減少を引き起こし、1,000 m以深では減少は100%に近くなる。これによって、大量の溶存有機炭素が深海の中へ放出され、本来資源が欠乏している水塊ではこの栄養分注入は特に重要となる。したがってウイルスは、全球的な生物地球化学サイクル、深海における代謝、および我々の生物圏で最大の生態系の全般的な機能に大きな役割を演じていると考えられる。表紙グラフィックは、深海でのウイルスと細菌の闘いを描いたもの。ウイルスによって破壊された細菌はほかの細菌の餌となっている(Article p.1084, News p.1038)。

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