Nature ハイライト
植物科学:植物のPIN-FORMEDオーキシン輸送体の構造と作用機構
Nature 609, 7927
オーキシンは植物で中心的な役割を担うホルモンで、生長と発育のほぼ全ての局面を制御している。PIN-FORMED(PIN)ファミリー(オーキシン排出担体ファミリーとも呼ばれる)のタンパク質は、この過程で働く重要なタンパク質で、細胞質ゾルから細胞外空間へのオーキシン排出を制御している。構造データと生化学データがないため、PINを介するオーキシン輸送の分子機構は明らかになっていない。本論文では、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のPIN8の生物物理学的解析結果を3種類の構造と共に報告する。3種類のうち2つは外側を向いたコンホメーションで、オーキシンを結合している場合と結合していない場合であり、もう1つは内側を向いたコンホメーションで、これは除草剤のナフチルフタラミン酸と結合している。こうした構造はホモ二量体を形成しており、各単量体は輸送ドメインと足場ドメインに分かれていて、オーキシン結合部位をはっきり識別できる。この結合部位の隣にあるプロリン–プロリンの交差箇所が、輸送に関連した構造変化の回転中心となるが、この構造変化はプロトン勾配やイオン勾配とは無関係で、おそらくオーキシンの持つ負電荷が原動力であるらしいことが分かった。これらの構造と生化学データは、胆汁酸/ナトリウム共輸送体や炭酸水素/ナトリウム共輸送体、ナトリウム/プロトン交換輸送体に似たエレベーター型の輸送機構を示している。これらの結果は、PINによるオーキシンの認識と輸送の包括的分子モデルをもたらし、輸送についてよく知られた概念的枠組みと結び付いて、こうした枠組みを拡大し、植物の生理、生長、発育の基本的特徴であるオーキシンの極性輸送の中心的機構を説明している。
2022年9月15日号の Nature ハイライト
光物理学:フェムト秒レーザーによる強誘電体ナノドメインの書き込みと消去
物理化学:一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギーが逆転した蛍光分子
原子物理学:水クラスターのアト秒分光測定
化学:閉じ込められた水の相図
地球科学:ファグラダルスフィヤル火山の噴火における前兆とマグマ供給
生態学:捕食魚は高気圧性の渦に集まる
古生物学:サッコリタスは新口動物ではなかった
医学:時代を大きくさかのぼる人類最古の手術の証拠
がんゲノミクス:アフリカ系の前立腺がんに特有なゲノム変化
代謝:脂肪組織の体性感覚神経支配
植物科学:全体的リン酸化とオーキシンキャナリゼーションにおけるABP1の働き
微生物学:トリプシン分解共生細菌の大腸における働き
免疫学:細菌の感知に必要なキナーゼNAGKの特定
植物科学:PINタンパク質がオーキシンを運ぶ仕組み
植物科学:オーキシンおよび阻害剤と結合したPIN類のクライオ電子顕微鏡観察
構造生物学:IL-17リガンド–受容体複合体の構造とその構築原理

