Nature ハイライト

代謝:脂肪組織の体性感覚神経支配の役割

Nature 609, 7927

脂肪組織は中枢神経系とコミュニケーションを行って、全身のエネルギー恒常性を維持している。主流の見解では、脂肪から分泌される循環血中のホルモンが脳に代謝状態を伝え、脳は末梢情報を統合して、ノルアドレナリン作動性交感神経の出力を介して脂肪細胞機能を調節するとされる。さらに、後根神経節の体性感覚ニューロンが脂肪組織を支配している。しかし、これらのニューロンを選択的に標的とする遺伝学的ツールがないため、それらの生理学的重要性についての理解は限られている。今回我々は、マウスにおいて器官特異的様式で感覚神経を操作するために、ウイルスや遺伝学、画像化を用いた戦略を開発した。これにより、細胞体から皮下脂肪細胞までの後根神経節の軸索投射全体を可視化することが可能になり、脂肪の感覚神経支配の解剖学的基盤が確立された。機能的には、脂肪組織での選択的な感覚神経の除去は、脂質合成転写プログラムと熱産生転写プログラムを亢進し、熱的中性条件下での脂肪パッドの拡大、ベージュ脂肪細胞の増加、体温上昇を引き起こした。感覚神経除去によって誘発される表現型には、完全な交感神経機能が必要だった。我々は、ベージュ脂肪を神経支配する感覚ニューロンが、交感神経系に対するブレーキとして働くことで、脂肪細胞の機能を調節するのではないかと考える。これらの結果は、後根神経節による脂肪組織の神経支配が持つ重要な役割を示しており、将来的には、異なる内受容系の感覚神経支配の役割を調べる研究を可能にすると思われる。

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