Nature ハイライト

生化学:NINJ1は溶解性細胞死の際の細胞膜破裂を仲介する

Nature 591, 7848

細胞膜破裂(PMR)は、溶解性細胞死における最終的な激変事象である。PMRによって、ダメージ関連分子パターン(DAMP)として知られる細胞内分子群が放出され、炎症反応が伝播する。しかし、PMRの根本的な機構は不明であった。今回我々は、膜貫通領域を2つ持つ、細胞表面のNINJ1タンパク質が、PMRの誘導に極めて重要な役割を担っていることを示す。ランダムに変異誘発を行ったマウスの順遺伝学的スクリーニングから、NINJ1とPMRの関連が示された。Ninj1−/−マクロファージでは、ピロトーシス、ネクローシス、アポトーシスといった細胞死を誘導するさまざまな刺激に応答したPMRが障害されていて、HMGB1(既知のDAMPの1つ)やLDH(PMRの標準的なマーカー)など、多数の細胞内タンパク質を放出できないことが分かった。Ninj1−/−マクロファージは死滅するが、形成されたバブル様のヘルニアの崩壊が起こらないため、独特の持続的に膨らんだ形態をしている。Ninj1−/−マウスは、野生型マウスよりも病原性細菌であるCitrobacter rodentium感染に感受性であり、これはPMRが抗菌性宿主防御において役割を担っていることを示唆している。機構的には、NINJ1は進化的に保存された細胞外ドメインを用いて、オリゴマー化とその後のPMRを引き起こす。NINJ1がPMRのメディエーターであるという今回の発見は、細胞死に関連したPMRが受動的な事象であるという長年の定説を覆すものである。

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