遺伝学:縦断的EHR解析と遺伝学的発見のためのベイズフレームワーク
Nature 656, 8129 doi: 10.1038/s41586-026-10780-5
電子健康記録(EHR)は疾患の豊富な縦断的履歴を提供するが、これらのデータを解析する既存の手法では通常、各疾患が互いに独立したものとして扱われており、生殖細胞系列の遺伝情報を統合することはほとんどない。今回我々は、EHRの縦断的な診断情報、年齢、多遺伝子リスクを同時にモデル化して、時間とともに変動する潜在的な疾患シグネチャーと患者固有のシグネチャー負荷量を復元するベイズ生成フレームワーク、ALADYNOULLIを提示する。このモデルは、混合の確率ではなく確率の混合として定式化されており、同時併存する病態や慢性病態を正しく扱うことができる。最長52年間の追跡と348の疾患を網羅する、英国バイオバンク、Mass General Brigham、All of Usの3つの独立したバイオバンク(合計n > 68万3000)にこのモデルを適用したところ、コホート間での高い構成保存性(中央値80%)を示す、再現可能な21のシグネチャーが復元され、診断カテゴリー内の生物学的サブタイプが明らかになった(コーエンのdは最大4.25、比較の95%でP ≤ 1 × 10−8)。得られたシグネチャーは、確立されている疾患生物学と整合しており、家族性高コレステロール血症の保因者には心血管シグネチャーが多く見られ、意義不明のクローン性造血の保有者には炎症シグネチャーが多く見られた。また、LDLR、TTNおよびBRCA2のまれなバリアント負荷は、疾患特異性と対応していた。シグネチャーに基づくゲノム規模関連解析では、単一形質解析では見逃されていた心血管関連など、ゲノム規模で有意な151座位が特定された。尤度を明示的に定義することで、生物学的シグナルを保ったまま、選択バイアスに対する逆確率重み付けが可能となる。疾患予測では、ALADYNOULLIは1年および10年の予測期間のいずれでも、PCE(Pooled Cohort Equation)、PREVENT、Gailより優れており、疾患レベルのPheCode予測は、Delphi-2Mなどのコードレベルの基盤モデルを補完した。

