Review

ワクチン:システムワクチン学とヒト免疫の構造

Nature 656, 8129 doi: 10.1038/s41586-026-10753-8

予防接種はヒトの歴史における最大の偉業の1つである。従来、ワクチンは感染を阻止する抗体応答を刺激するよう設計されてきたが、この考え方では免疫系の複雑で多面的な防御機構が見落とされている。本論文では、ワクチンをヒト免疫系の制御されたプローブとして用いるとともに、マルチオミクスと計算的手法を適用してヒト免疫の性質を明らかにすることでワクチン研究を変革してきた、システムワクチン学分野の現状を概説する。これらの手法により、免疫応答の規模と持続性を予測する分子シグネチャーが特定されるとともに、宿主の遺伝学的性質、代謝、マイクロバイオームが免疫をどのように形作っているかなど、ヒトの新たな生物学的性質が明らかになった。さらに、宿主防御が、ベースライン時の免疫状態、初期応答の動態および組織レベルの相互作用にわたる、協調的な免疫プログラムから生じることが実証された。人工知能の急速な進歩により、膨大なマルチオミクスデータセットからの知識と理解の抽出が加速し始めている。こうした進展により、システムワクチン学は、合理的なワクチン設計のための強力な枠組みとして位置付けられている。しかし、発見やヒト免疫への多大な影響にもかかわらず、これらの知見を臨床診療や規制実施へ応用するには、今なお大きな課題が残されている。このような橋渡し上の隔たりを解消することは、既存および新興の感染症の脅威に対して、より安全で有効なワクチンを供給するというシステムワクチン学の可能性を最大限に実現するために不可欠である。

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