幹細胞:腸幹細胞は自己再生分裂の回数を数えて多能性を切り替える
Nature 656, 8128 doi: 10.1038/s41586-026-10814-y
多能性幹細胞は、異なる娘細胞タイプを決まった比率で産生することによって組織恒常性を維持している。しかし、細胞分裂を繰り返す際に、細胞タイプ特異的な比率をどのように調整しているかは解明されていない。ショウジョウバエ(Drosophila)の腸幹細胞(ISC)は、腸内分泌細胞(EEC)の生成と吸収上皮細胞(EC)の産生を切り替えるが、組織が迅速に代謝回転するにもかかわらず、EEC:ECの比率を一定に保っている。今回我々は、ISCがエピジェネティックな機構によって自己再生分裂の回数を内因的に数え、多能性の切り替えを制御していることを示す。ISCは、腸内分泌母細胞(EMC;対称分裂して一対のEECを産生する)を生じる各非対称分裂の後、ECを産生する分裂を正確に8回行い、その後、9回目の分裂でEMCを産生する分裂に戻る。この計数は、拮抗的なヒストン修飾によって駆動される。すなわち、トライソラクス群(TrxG)依存的な活性標識(H3K4me3とH3K36me3)が徐々に減少する一方、ポリコーム群(PcG)依存的な抑制標識(H3K27me3)は分裂を重ねるごとに蓄積し、閾値に達すると運命の切り替えの引き金となる。この分裂回数は、TrxG活性とPcG活性を調整することによって変更できるが、急性の損傷を受けても維持される。重要なことに、EMC由来の一過的なNotchシグナル伝達がISCに活性標識を確立して計測を開始させ、これにより各EMC生成が計測周期の開始点として定まる。これらの知見は、幹細胞における発生忠実度をプログラム化する、ヒストン修飾に基づく分裂回数計測機構を明らかにするものであり、この機構は、組織成長の工学的制御と、分化障害に対する治療法に大きな意味を持つ。

