がん遺伝学:急性骨髄性白血病におけるクロマチンの全体像とエピジェネティックな不均一性
Nature 656, 8128 doi: 10.1038/s41586-026-10703-4
急性骨髄性白血病(AML)は未分化な骨髄芽球の異常な増殖を特徴とする悪性度の高い血液がんである。AMLでは、遺伝子変異がその病態形成や腫瘍間での不均一性、臨床転帰に大きな影響を及ぼすことが示されているが、これらの点についてエピゲノムの変化が果たす役割は十分検討されていない。本研究で我々は、新たにAMLと診断された1563症例からなる患者コホート(「eCHROMA」コホート)を対象としたATAC-seq解析(assay for transposase-accessible chromatin with sequencing)を通じて、AMLがクロマチンアクセシビリティーの特徴に基づいて16のサブグループに分類できることを示す。遺伝子変異、トランスクリプトーム、DNAメチル化、ヒストン修飾に関するマルチオミクス解析では、これらのATACサブグループは、それぞれ異なるドライバー変異、分化状態、遺伝子発現、DNAメチル化、スーパーエンハンサーの特徴を示し、また、臨床転帰とも関連していることが明らかになった。これらの知見は、独立したコホートでも検証された。単一細胞ATAC-seqでは、それぞれのサブグループに属する全ての白血病細胞が同じクロマチンアクセシビリティーの特徴を共有していることが明らかとなった。これは、サブグループに固有のエピゲノムの特性がATACに基づく分類の基盤となっていることを示唆している。メカニズムの点では、各サブグループには、造血で鍵となる転写因子の活性によって駆動される固有の遺伝子調節ネットワークが存在し、その中でサブグループ特異的なスーパーエンハンサーが重要な役割を果たしていた。さらに単一細胞マルチオミクス解析の結果、これらのサブグループは、クロマチンアクセシビリティーおよび遺伝子発現とリンクした、異常な分化の様相を示すことが明らかとなった。特に、ATACサブグループは、ゲノム分類とは独立して予後に影響し、特定の薬剤感受性とも関連していた。以上より、ATACに基づくクロマチンプロファイリングは、マルチオミクスデータと併せて、AMLの病態形成に関してゲノム解析だけでは捉えきれない視野を与えるものであり、AML研究の有用な研究資源を提供する。

