Article

微生物学:宿主細胞への定着に不可欠な内部共生者の分泌タンパク質

Nature 656, 8127 doi: 10.1038/s41586-026-10711-4

細菌による細胞内共生は真核生物で何度も起きており、昆虫だけでも数十例が知られている。アブラムシの絶対内部共生者であるブフネラ(Buchnera)をはじめ、内部共生者のゲノムは、それらの進化的起源や宿主への代謝的な関与を明らかにしてきた。しかし、培養不可能な内部共生者が宿主細胞へ侵入し、細胞の免疫過程を抑制する機構はまだ明らかにされていない。本論文で我々は、SyeAと命名した機能未解明のブフネラタンパク質が、ブフネラの祖先にも存在しており、宿主の細胞質に分泌され、細菌性病原体の分泌エフェクタータンパク質と相同性があり、ブフネラの伝播に不可欠であることを示す。ブフネラは、母虫の特殊化した細胞から排出され、胚に取り込まれることで伝播される。我々は、免疫蛍光顕微鏡観察により、胚細胞への定着後にSyeAの量が増加し、それに伴って侵入部位にアクチンが蓄積することを見いだした。SyeAは、宿主細胞質内の個々のブフネラ細胞を取り囲む宿主由来の膜やアクチン層の外側に局在する。syeAの発現をノックダウンすると、胚への定着や胚発生が阻害され、リソソームの活性が上昇し、その結果、ブフネラが破壊された。これらの知見は、古くから共生してきた相利的な内部共生者が細胞内に存在し得る仕組みについての手掛かりをもたらす。SyeAは、病原体に由来する性質の名残であり、その後の進化で宿主による制御が強まり、元来のより複雑な病原性装置が退縮したことを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度