分子生物学:複製ストレスが誘発するクロマチンループが、複製フォークの安定性を守る
Nature 656, 8127 doi: 10.1038/s41586-026-10695-1
複製ストレスは、ゲノムの完全性に対する重大な脅威となるが、高次クロマチン構造が複製フォークの保護にどのように寄与しているのかは解明されていない。今回我々は、複製ストレスが、新たに形成されたヘテロクロマチンに富む停止した複製フォークを内部に囲い込む、一過性のクロマチンループ形成を誘導することを示す。ストレスを受けた複製フォークは、互いに向かい合うCTCFモチーフの所で選択的に停止し、これが引き金となってストレス依存性のCTCF濃縮を引き起こす。このCTCF濃縮がループの押し出しを制限し、これらの構造を安定化する。ループの安定化には、CTCFによる固定と、ループ本体内の新生DNA上へのG9a依存的なヘテロクロマチン(ヒストンH3のLys9のトリメチル化〔H3K9me3〕)付加の両方が必要である。これらのループは、保護足場として機能し、停止したフォークや逆行したフォークを、複数のヌクレアーゼによる分解から守る。これに対し、ストレス誘発性ヘテロクロマチンとCTCF濃縮が同時に失われると、ループ足場が不安定化し、ヌクレアーゼが攻撃できる進入口が複数露出する。その結果、古典的なフォークの逆行性依存経路とは異なる機構によって、新生鎖が広範に分解される。この保護構造は、BRCA2欠失細胞でも同様に重要である。この細胞では、複製ストレスに関連したループが主として複製開始領域を保護している一方、ループ外の新生DNAは大規模に分解され、変異に対して非常に脆弱な状態となる。今回の研究は、複製ストレスが誘発するゲノム三次元構造の再編成が、複製フォークの安定性を維持する上で果たす基本的な役割を解明し、これによって、変異の発生やゲノムの不安定性が軽減されることを示している。

