分子生物学:哺乳類では、RNAの変則的解読の結果、安定的なタンパク質が大量に生じる
Nature 656, 8127 doi: 10.1038/s41586-026-10678-2
アミノ酸置換は、タンパク質の安定性と機能を大きく変化させる可能性がある。しかし、代替翻訳(遺伝暗号からの逸脱)によって生じるアミノ酸置換がどの程度寄与するかはよく分かっていない。今回我々は、この問題に取り組むため、6種類のがんと26種類の健康なヒト組織を含む1000を超えるヒト試料から得られた、プロテオーム、トランスクリプトーム、ゲノムデータの高深度解析を行った。この包括的解析によって、1767の遺伝子に由来するタンパク質において、8746の独特な置換に対応する6万803の断片化スペクトルが特定された。その中には位置を高い信頼度で特定できた1955部位が含まれる。一部の置換は複数試料に共通していたが、組織の種類やがんに強い特異性を示す置換もあった。注目すべきことに、何百種類のタンパク質では、代替翻訳の産物が、カノニカルな対応産物よりも豊富に存在していた。これは、センスコドンの再コード化が起きていることを示唆している。再コード化されたタンパク質には、転写因子、プロテアーゼ、シグナル伝達タンパク質、神経変性に関係するタンパク質が含まれていた。置換産物の存在量に寄与する機構としては、タンパク質の安定性、コドン頻度、コドン–アンチコドンのミスマッチ、RNA修飾などがある。我々はさらに、代替翻訳されたプロテオフォームの比率が、タンパク質ドメイン、組織のタイプ、がんの間でどのように変化するかも明らかにした。これらの比率は、天然変性領域およびgnomADデータベースにおける遺伝的多型と正の相関が見られたが、これらの多型によって置換そのものを説明することはできなかった。代替翻訳タンパク質のアミノ酸配列、相対存在量、組織特異性は、ヒトとマウスの間でよく保存されていた。これらの結果は、代替翻訳が哺乳類プロテオームの多様化に寄与していること、そして、タンパク質安定性、組織特異的プロテオーム、疾患と関連することを実証している。

