2D材料:菱面体グラフェンにおける磁場増強超伝導状態ファミリー
Nature 656, 8126 doi: 10.1038/s41586-026-10815-x
一部の非従来型超伝導体では、時間反転対称性がゲージ対称性とは別個に破れることがあり、その結果、磁場によって増強または誘起され得る超伝導性が生じる。しかし、磁場増強超伝導体は、バーディーン–クーパー–シュリーファー型の超伝導体よりも不純物の影響を受けやすい。菱面体晶多層グラフェンは、優れた材料品質とゲート制御可能な強相関効果を有するため、こうした超伝導体を探索するための有望なプラットフォームである。今回我々は、菱面体晶4層および5層グラフェンの輸送測定結果を報告し、多様なクリーン極限超伝導状態を実証する。我々は、5層グラフェンにおいて、磁場によって増強または誘起される3種類の異なるタイプの超伝導状態を発見した。これらは全て、最高8.5 Tまでの面内磁場に対してロバストであり、パウリ限界を数十倍上回る。面内磁場による増強のみを示すBernal積層2層グラフェンと比較して、5層グラフェンは、面内磁場だけでなく面外磁場によっても増強される複数の超伝導状態を特徴とする。これらの超伝導状態は、バンド分散が本質的により平坦であることに起因して、はるかに低いゲート電場でも現れ、それらの研究やさらなる設計が容易である。さらに我々は、近接スピン–軌道相互作用が、余分な無秩序効果を生じることなく複数の新たな超伝導状態を生み出すことを観測した。今回の成果より、菱面体晶グラフェンにおける、磁場増強型超伝導状態の新たなファミリーが確立された。これらの状態は中程度のゲート電圧で容易に実現でき、これを用いれば、結晶性グラフェンの極めて高い品質を維持したまま近接スピン–軌道相互作用によってトポロジカル状態をもたらされ、極端なクリーン極限において、界面設計を通じて非アーベル型準粒子を実現する道が開かれる。

