計算生物物理学:薬物結合タンパク質のニューラル反復選択–拡張によるゼロショット設計
Nature 656, 8126 doi: 10.1038/s41586-026-10670-w
小分子に結合するタンパク質の設計は困難だが、それはタンパク質の配列やその構造、リガンドのコンホメーションを同時に最適化する必要があるからである。現在の深層学習アルゴリズムは、この複雑な設計空間を探索することが難しく、結合タンパク質のゼロショット設計は実現していない。本研究で我々は、2つのニューラルネットワークを反復設計アルゴリズムの中で組み合わせることで、小分子結合タンパク質を高い精度でゼロから作製できることを示す。我々はグラフニューラルネットワークであるLASErMPNN(ligand-aware sequence engineering message-passing neural network)を訓練し、入力したタンパク質主鎖と、そこにドッキングしたリガンドに適合するタンパク質配列を設計させた。次に、LASErMPNNを構造予測器と組み合わせた。これは、入力したタンパク質配列とリガンドの種類から三次元タンパク質–リガンド複合体をモデル化する。相互的なこれらのネットワークを閉ループで反復することにより、配列–構造–リガンド間の適合性を最適化でき、物理学ベースのエネルギー関数を用いる同等の設計ループを上回る性能が得られた。我々は、ニューラル反復選択–拡張(NISE)と命名したこの戦略を用い、さまざまな異なるタンパク質の折りたたみ方を用いて、化学的に異なる2種類の小分子薬であるエキサテカンとアピキサバンに特異的に結合するタンパク質を設計した。成功率はそれぞれ100%と83%であった。NISEで得られた最も親和性の高い結合タンパク質は、ナノモルからピコモル域の親和性を示し、比較対象とされた既存手法で得られた最良の結合タンパク質に比べると、エキサテカンでは70倍、アピキサバンでは約1万倍高い親和性を示した。さらにLASErMPNNは、実験データを一切入力することなく、最も高親和性のエキサテカン結合タンパク質の親和性を100倍向上させる2つのアミノ酸置換を提案した。最適化された結合タンパク質は、不安定なエキサテカンのラクトン環を数日間にわたって加水分解から保護した。今回の研究は、薬物送達、センシング、触媒反応への応用に向けて、ニューラルネットワークを用いて小分子結合タンパク質の設計を自動化するための汎用的な方法を示している。

