遺伝学:ヒト血液で加齢に伴ってmtDNA変異が蓄積する機構
Nature 656, 8126 doi: 10.1038/s41586-026-10569-6
変異型のミトコンドリアDNA(mtDNA)のヘテロプラスミーの蓄積は、老化の最も強力なシグネチャーの1つである。今回我々は、約75万人の全ゲノム塩基配列を用いて、ヒト血液中のmtDNA塩基配列、mtDNA量、mtDNAヘテロプラスミーバリアントを読み出し、その根底にある機構を調べた。その結果、mtDNA一塩基バリアント(mtSNV)は、60歳で急激に蓄積し、ヘテロプラスミーは低レベルで、正の選択の証拠はほとんどなく、その大部分は中立的である可能性が高いことが観察された。mtSNVの変異スペクトルは、一般的に考えられているような酸化的損傷を反映しておらず、むしろmtDNAの複製エラーとより整合性があった。我々は、mtSNVが加齢とともに検出可能になる理由を解明するため、ヘテロプラスミーのmtSNV量についてゲノム規模関連解析を行い、TERT、TCL1A、SMC4(これらは全て、クローン造血〔CH〕と関連付けられている)近傍の生殖系列バリアントを特定した。また、まれなバリアントの解析から、mtSNV量の多さは、多数のCHドライバー遺伝子の変異と関連していることが示された。これらの遺伝的関連は、既知のCHドライバー変異を持つ個体を除外した後も持続した。我々の結果は、「隠れた」mtDNA変異は当初、複製エラーとしてランダムに生じるが、バルクでは検出できず、その後、血液中の細胞クローンの加齢に伴って増殖することによって初めて顕在化するというモデルを支持する。我々は、mtDNAが、そのコピー数および変異率の高さにより、CHに起因する体細胞モザイクの高感度な血液ベースのマーカーとなると提案する。我々の研究は、TERTのありふれた生殖系列バリアント、CH、および観察されたmtDNA変異蓄積という、加齢の3つの顕著なシグネチャーを機構的に統合している。

