有機化学:グリコヒドラジドのラジカルクロスカップリングによるC-グリコシド合成
Nature 655, 8125 doi: 10.1038/s41586-026-10807-x
炭水化物は、自然界で最も豊富で構造的に多様な生体分子の一群であり、エネルギー貯蔵、分子認識、細胞シグナル伝達において中心的な役割を果たしている。こうした多様な炭水化物の中で、O-グリコシドのグリコシド結合に含まれる酸素原子を炭素で置換したC-グリコシドは、酵素的加水分解に対する抵抗性を持つため、医薬品化学における有用なモチーフとなっている。特に重要なのがC-アリールグリコシドであり、その例として、2型糖尿病の第一選択治療薬SGLT2阻害剤のダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジンが挙げられる。しかし、C-アリールグリコシドのスケーラブル合成は、従来、保護された糖誘導体、長い合成工程、あるいは一般に選択性が低く、適用範囲が限られ、保護基の導入・除去を多用するクロスカップリングに依存している。今回我々は、クロスカップリングの酸化還元中性ラジカル前駆体としてグリコシルスルホニルヒドラジドを用いる、C-アリールグリコシドのスケールアップ可能な実用的手法を報告する。グリコシルスルホニルヒドラジドは、無保護の天然糖から直接合成でき、温和な条件下でグリコシルラジカルを生成する。そして、承認済みの全てのSGLT2阻害剤、サルモケリンやネオペトロシンなどの天然物、および医薬的に重要なプローブを含む、多様なC-アリールグリコシドへ高効率なアクセスを可能にする。今回のプラットフォームは、C-グリコシド結合のみならずのみならず、炭水化物骨格上の複数の位置においてC–C結合形成を可能にするとともに、基質固有の立体化学的偏りを覆し得る立体保持型ラジカルカップリングにも利用でき、炭水化物由来の治療薬や化学ツールを実用的に得られる範囲を拡張するものである。

