人工知能:自律型医療人工知能エージェントの実現に向けて
Nature 655, 8125 doi: 10.1038/s41586-026-10675-5
大規模言語モデル(LLM)は臨床意思決定に大きな可能性を示しているが、応用例の大半は、臨床ワークフローに統合されたシステムではなく、用途の限定されたタスク特化型チャットツールにとどまっている。しかし、医師のコパイロットを構築するには、電子健康記録(EHR)内で動作し、管理された形で患者データにアクセスするとともに、定められた安全上の制約内で、許可されたEHR操作を開始できるモデルが必要となる。そのようなシステムが、医師と同等の水準で患者症例を管理できるかどうかは、まだ実証されていない。本研究で我々は、サンドボックス化されたEHR環境で動作する自律型人工知能エージェントであるMIRA(Medical Intelligence for Reasoning and Action)が、広大な臨床行動空間を探索して、患者の病歴を取得する他、臨床検査、画像検査、微生物学的検査を指示してその結果を解釈し、鑑別診断を作成し、さらには薬剤の処方、外科的処置の日程設定、入院計画などの治療計画を立案できることを示す。複数の診断領域にまたがる実際の患者症例を用いたシミュレーションでは、MIRAは診断精度で医師を上回り、ガイドラインに準拠し、薬剤使用上安全で、かつ適切な入院判断を行った。個別のサブタスクを処理したり、自由記述形式の助言を提供したりしていた従来のLLM応用と比べ、本研究の結果は、EHRに統合された人工知能エージェントが、臨床上の意図を構造化された実行可能なEHR操作へ変換でき、医師にとってより効果的な意思決定支援パートナーとなる可能性を示唆している。一般化可能性、安全性、ガバナンスを確立するためには、前向きのリアルワールド研究による今後の検討が必要である。

