神経科学:海馬のCA3領域とCA1領域間での疎から密への符号化変換
Nature 655, 8125 doi: 10.1038/s41586-026-10537-0
海馬は空間記憶とナビゲーションに非常に重要である。海馬には場所細胞が含まれる。場所細胞は、解剖学的接続性が大きく異なる2つの海馬亜領域であるCA1領域とCA3領域に存在する空間選択的ニューロンである。以前の研究で、CA1の場所細胞とCA3の場所細胞では、空間符号化が非常に類似していることが見いだされている。このことから、連続的な処理段階を形成する2つの亜領域が、なぜ同一の神経符号化を示すのかという疑問が生じる。本研究で我々は、CA1とCA3の空間符号化の間に違いが認められないのは、小さなアリーナを用いる実験パラダイムが原因ではないかという仮説を立てた。我々は、この仮説を検証するために、最長200 mの飛行トンネル内を飛ぶコウモリで、CA1ニューロンとCA3ニューロンから同時に記録を行った。その結果、CA1とCA3で神経符号化が大きく異なることを突き止めた。CA1ニューロンでは、複数の場所受容野から構成される密な空間符号化が見られたのに対して、CA3ニューロンでは、主に単一の場所受容野からなる超疎な空間符号化が見られた。この顕著な違いにもかかわらず、6〜200 mの範囲の5つの異なる環境サイズ全てで、場所受容野のサイズは2つの亜領域間で非常に類似していた。我々は、ニューラルネットワークモデルを用いて、このような疎から密への変換が、新しい空間地図の速やかな学習を促し得ることを示す。我々はまた、大規模な多区画環境では、場所細胞は、移動軌跡の履歴によって強く調節されていることも見いだした。これは、100 m以上持続し得る文脈効果、すなわち遡及的符号化である。以上をまとめると、我々は、自然に近い大規模な環境を用いることにより、CA3からCA1への符号化変換が、空間情報をより効率的で圧縮された神経符号に再構成する役割を果たしていることを明らかにした。

