がん:IDH変異型グリオーマの進行中に獲得された遺伝的変化と細胞状態変化
Nature 655, 8124 doi: 10.1038/s41586-026-10612-6
変異型のイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)を有するグリオーマ(神経膠腫)は悪性の脳腫瘍で、通常は成人期の早期から中期に生じ、ほとんどの場合、治療後に再発する。しかし、治療下でのIDH変異型グリオーマの進行を駆動する遺伝的変化と細胞状態の変化については、ほとんど分かっていない。本研究で我々は、オリゴデンドログリオーマおよびアストロサイトーマという両方のIDH変異型グリオーマ腫瘍タイプを含む35人の患者から、異なる時点で採取した75検体のグリオーマについて、単一核トランスクリプトームプロファイリング、クロマチンアクセシビリティーのプロファイリング、バルクDNA・RNA塩基配列解読の結果を統合した。その結果、悪性細胞の状態は、正常なグリア細胞–ニューロン細胞系譜の発生状態、もしくは反応性の間葉系様状態と転写的に類似しており、IDH野生型グリオブラストーマ(神経膠芽腫)で以前に報告された状態を反映していることが明らかになった。悪性細胞状態はそれぞれ異なるクロマチンアクセシビリティープロファイルを示していて、これらは両方のIDH変異型グリオーマタイプ間で類似していた。分化度の低い悪性細胞の存在量は、悪性度高くなるにつれて、あるいはPDGFRA増幅のような遺伝的変化に伴って増加した。縦断解析からは、悪性細胞状態の主要な移行パターンが2つ明らかになった。1つ目は、再発時に細胞系譜分化が減少し、増殖性悪性細胞が増加するパターンは、再発に関連した遺伝事象が起こるようになったグリオーマで多く見られたことである。これらの遺伝事象には、治療に関連する高頻度変異、コピー数変化の増加、および細胞周期の変化が含まれていた。2つ目は、間葉系様状態にある細胞数の増加が、獲得された遺伝的変化とは無関係に、マクロファージ発現上昇と同時に生じたことである。まとめると我々の知見は、IDH変異型グリオーマの疾患が進行する間に細胞状態を形作る、細胞内因性因子と細胞外因性因子を追跡する統合モデルをもたらす。

