分子生物学:αKGが関与するカルニチン合成はヒストンアセチル化を介してDNA修復を推進する
Nature 655, 8123 doi: 10.1038/s41586-026-10584-7
相同組換え(HR)が行えないと、がん治療に広く使われているDNA損傷剤に対する感受性が高くなる。HRを行えるがんでは、DNA損傷剤に対する応答や抵抗性を駆動する代謝機構は、まだ解明されていない。今回我々は、α-ケトグルタル酸(αKG)を枯渇させると、ヒストンアセチル化の代謝調節を通して、HR能を持つ細胞がDNA損傷剤に感受性になることを突き止めた。αKGは、αKG依存性ジオキシゲナーゼ(αKGDD)の活性に必要であり、以前の研究は、ほぼαKGDDのデメチラーゼ機能に焦点が絞られていた。64種類のαKGDDからなる標的化CRISPRノックアウトライブラリーを用いて調べたところ、カルニチンのde novo合成における最初の酵素で律速酵素でもあるトリメチルリシンヒドロキシラーゼε(TMLHE)が、DNA損傷剤存在下でHR能を持つ細胞の生存に必要なことが分かった。意外にも、αKGの働きによるTMLHE依存性カルニチン合成はヒストンアセチル化に必要であり、他の核・細胞質ゾルのアセチルCoA生成経路では代替できなかった。αKG–カルニチン合成軸を利用したヒストンアセチル化の増加は、部位特異的ヒストンアセチル化を通して、HRを介したDNA修復を促進した。さらに、患者試料においてTMLHEとヒストンアセチル化の間に正の相関関係が認められ、DNA損傷剤を投与された患者では、高TMLHEあるいは高アセチルカルニチンが、より悪い無増悪生存率と関連することも明らかになった。今回の研究は、我々の知る限りで初めて、αKGが部位特異的なヒストンアセチル化に影響をすることを実証するとともに、カルニチン合成を介してHR能が得られる仕組みを示している。これらのデータからはさらに、HRの不全を誘導して、DNA損傷剤への感受性を高めるための代謝的手法がもたらされる。

