人工知能:科学的発見を自動化するマルチエージェントシステム
Nature 655, 8122 doi: 10.1038/s41586-026-10652-y
科学的発見は、観察、仮説生成、実験、データ解析からなる反復過程によって駆動される。近年、人工知能(AI)の生物学への応用には進展が見られるが、これら全ての段階を自動化したシステムはまだ存在しない。今回我々は、実験生物学における仮説生成とデータ解析の両方を完全に自動化できるマルチエージェントシステムであるRobinを紹介する。Robinは、文献検索エージェントとデータ解析エージェントを統合することで、仮説を生成し、実験を提案し、実験結果を解釈し、更新された仮説を生成できるため、科学的発見に向けた半自律的な方法が実現される。Robinを適用することで、先進国で失明の主因となっている萎縮型加齢黄斑変性に対する有望な治療薬候補が特定できた。Robinは、治療戦略として網膜色素上皮の貪食作用を増強することを提案し、リパスジルとKL001についてin vitroでの有効性を特定し、確認した。リパスジルは既に臨床で使われているRhoキナーゼ阻害薬で、我々の知る限り、これまでに萎縮型加齢黄斑変性の治療薬として提案されたことはない。リパスジルによって誘導される貪食作用の上方調節機構を解明するため、Robinは続いてRNA塩基配列解読実験を提案し、解析した。その結果、脂質排出ポンプをコードしていて、新規標的となり得るABCA1の上方調節が明らかになった。本報告の本文中にある仮説、実験の方向性、データ解析、データ図は全て、Robinによって作成されたものである。反復的なラボ・イン・ザ・ループのフレームワークの中で、新規治療薬候補を自律的に発見して検証した最初期のAIシステムの1つとして、RobinはAI駆動型の科学的発見の新しいパラダイムを確立する。

