古代遺伝学:ヨーロッパ北西部における後期ネアンデルタール人の遺伝的多様性
Nature 655, 8122 doi: 10.1038/s41586-026-10625-1
考古学的、骨学的および遺伝学的な証拠からは、ネアンデルタール人が小規模な集団で生活していたことが示唆されている。しかし、これらの集団が隔離された地域社会の一部であったのか、あるいはより大規模で互いに密接に結び付いた複数集団に属していたのかは、よく分かっていない。ベルギーのマース川流域には、ほぼ同年代のネアンデルタール人遺跡が密集しており、この状況は、地域集団を高分解能で研究するための貴重な機会を提供している。本研究で我々は、ベルギーとフランスの10カ所の考古学的遺跡に由来する、年代が約5万2500年前以降のネアンデルタール人27個体から、遺伝的データを生成した。これには、ベルギーのゴイエで出土した4万5000年前の個体から得られた高カバー率のゲノムが含まれる。これらの個体のほとんどは、ヨーロッパの他の同年代の後期ネアンデルタール人とよりも、互いにより近縁であることが明らかになった。さらに、これらの中には、後期ネアンデルタール人が分岐する前のネアンデルタール人系統に由来するDNAを持つ個体もあった。これらのネアンデルタール人は、約4万7000年前にヨーロッパ北西部に存在していた初期の現生人類と年代的には重複するが、現生人類からの最近の遺伝子流動を示す証拠は見つからなかった。これらの個体には、アルタイ地方のネアンデルタール人で見られたような近親者同士の交配を示す遺伝的シグネチャーも見つからなかったことから、より大規模あるいは互いによく結び付いた複数の集団で生活していたことが示唆された。また、遺伝的荷重は時間とともに蓄積しておらず、これは、ネアンデルタール人の絶滅を促した要因が遺伝的劣化の進行であったとする考えに異議を呈している。

