生化学:細胞と組織でのグリコーゲンおよび代謝産物のユビキチン化
Nature 655, 8122 doi: 10.1038/s41586-026-10548-x
ユビキチンシグナル伝達は広範なタンパク質修飾に関わっているが、糖、脂質、ヌクレオチドのような非タンパク質性基質のユビキチン化も起こるため、その範囲はいまだに実際よりも少なく見積もられている可能性がある。ユビキチン化された非タンパク質性基質の範囲、その量、また細胞におけるその役割は現在のところ不明であり、それは、現在のユビキチノミクスの技術、あるいはプロテオミクスの技術では、非タンパク質性修飾は検出できないからである。今回我々は、ユビキチンクリッパーゼとソルターゼ標識付けを組み合わせた質量分析法をベースにした、非タンパク質性ユビキチンクリッピング(NoPro-clipping)という技術を開発した。標的を定めたワークフローと標的を定めないワークフローによって、哺乳類細胞ならびにマウスとヒトの組織でユビキチン化基質が幅広く見つかった。マウスのグリコーゲン含有組織では、ユビキチン化されたグリコーゲンが見つかり、その量は肝臓と骨格筋で最も多かった。ユビキチン化によってグリコーゲンがリソソームへと送達可能となり、グリコーゲン量の低下につながる。糖原病ではグリコーゲンのユビキチン化が変調しており、Met1-ポリユビキチン装置によって調節されていることが分かった。特に興味深いのは、絶食中の肝臓でのグリコーゲン枯渇がグリコーゲンのユビキチン化増加と同時に起こり、これは、ユビキチンが生理的なグリコーゲン異化にこれまで知られていなかった構成要素であることを示唆している。我々はまた、細胞および組織における内在性のグリセロールとスペルミンもユビキチン化されることを明らかにした。このように、NoPro-clippingによって、予想外の内在性非タンパク質がユビキチン化の標的になることが明らかになり、ユビキチンの役割がタンパク質の修飾因子から生体分子一般の修飾因子へと広がった。

