細胞の代謝:ミトコンドリアは核膜孔複合体と直接的に相互作用する
Nature 654, 8119 doi: 10.1038/s41586-026-10588-3
ミトコンドリアは、他の細胞小器官との直接的および間接的な相互作用を介して細胞過程を調節している。詳しく研究されているその例の1つが、ミトコンドリア関連小胞体膜における小胞体との接触で、これは酸化還元経路やカルシウムの恒常性維持経路などを制御している。最近の研究では、がん細胞や酵母でのミトコンドリアと核膜の直接の接触が、生存促進性シグナル伝達を促進することが報告されている。今回我々は、ミトコンドリアと核膜孔の間に直接の相互作用が存在することを明らかにする。我々は、GSTプルダウン法とBioID法という2種類の偏りのないプロテオミクススクリーニングを用いて、VDAC1が核膜孔の繊維状タンパク質RANBP2と相互作用するミトコンドリア側の第一候補であることを見いだした。in vitroでのRANBP2のCRISPRによるノックアウトやRANBP2の切り詰め、あるいはRANBP2–VDAC1で相互作用するアミノ酸の部位特異的変異誘発を行うと、ミトコンドリアと核の近接性が下がり、核でのATPレベルと、クレアチンリン酸のレベルが低下する。これに伴って、in vitroでは核のリン酸化プロテオームレベルが低下し、ヒストン修飾、細胞の分化、転写調節に関与する経路が下方制御された。さらに、in vivoでは、マウスにおいてRANBP2のC末端ドメインを欠失させると、心臓および神経堤の分化異常のために胚致死となった。これらの結果をまとめると、ミトコンドリアが核膜孔複合体と直接相互作用する機構が明らかとなり、この結合は、核のエネルギー論と細胞分化の調節に極めて重要な現象である。また、この相互作用には他にも役割があることは明らかで、今後の解明が待たれる。

