がん:ネトリン1の遮断は膵臓がんの化学療法抵抗性を低減する
Nature 654, 8119 doi: 10.1038/s41586-026-10436-4
発生のシグナル因子であるネトリン1は、腫瘍の上皮間葉転換(EMT)のマスター調節因子であり、EMTは化学療法への抵抗性を駆動する機構として知られている。ネトリン1抗体(NP137)は、前臨床条件および臨床条件下で腫瘍のEMTを阻害することが報告されている。膵臓がんの動物モデルでは、ネトリン1とその受容体であるネオゲニンは、腫瘍の進行、EMT、転移を促すことが分かっている。今回我々は、局所進行膵臓がんの一次治療患者において、NP137とmFOLFIRINOX(modified FOLFIRINOX)の併用を評価した第1b相試験の結果を報告する(ClinicalTrials.gov:NCT05546853)。43人の患者が登録され、mFOLFIRINOXとNP137の併用療法が隔週で最長で12サイクルにわたって投与された。NP137の忍容性は良好だった。無増悪生存期間(PFS)の中央値は10.85カ月(95%信頼区間、10.03〜15.61)、全生存期間の中央値は16.43カ月(95%信頼区間、12.75〜未到達)であり、データカットオフ時点で21人の患者が生存していた。治療後のコンバージョン手術は、23%の患者で実施された。治療前の生検組織および手術検体に対して、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションを行った。マイクロバルクRNA塩基配列解読を行い、mFOLFIRINOXとNP137の併用により下方調節された主要な経路がEMTであることが確認された。さらに、ネトリン1受容体であるネオゲニンを高発現する腫瘍細胞を持つ患者では、生存転帰が延長された(ネオゲニン低発現群のPFS中央値が10.22カ月だったのに対し、高発現群では15.65カ月)。我々の結果は、ネトリン1阻害はEMTを抑制することで化学療法抵抗性を軽減し、その作用はネオゲニン高発現膵臓がんで特に顕著であるという考えを裏付けている。

