Article

生態学:花粉媒介者は脆弱なコミュニティーの栄養と収入を支えている

Nature 654, 8119 doi: 10.1038/s41586-026-10421-x

生物多様性の喪失は、花粉媒介のような生態系サービスの劣化を通じて、人間の健康と福祉を脅かす。しかし、生態系と人間とを結び付ける機構が明らかにならなければ、これらの生態系サービスは抽象的で実体のないものであり続けかねない。その結果として、環境の劣化が人間の福祉に及ぼす影響を予測したり、人々の生活を改善する有効な生態学的介入策を見いだしたりすることは困難となっている。本研究で我々は、ネパールの同条件の複数の小規模農家コミュニティーにおいて、個人レベルの食餌、作物収量、農業収入、作物–花粉媒介者間相互作用を記録し、花粉媒介昆虫、作物植物、個々の世帯の栄養素摂取量・収入の間の関係性を定量化した。その結果、花粉媒介昆虫は、人々の農業収入の44%、ならびに人々のビタミンA、葉酸、ビタミンEの摂取量の20%超に直接寄与していることが分かった。我々は、今回の研究で対象としたような脆弱なコミュニティーにおいて、地域の花粉媒介種の減少が、貧困率および微量栄養素欠乏率をどのように悪化させると予想されるかを示す。一方で我々の結果は、地域の花粉媒介サービスを管理することにより、人々の栄養状態と世帯収入が改善し得ることを実証している。実際、在来のミツバチ類、マルハナバチ類、ハナアブ類のような個体数の多い花粉媒介者は、栄養素の流れを維持・向上させるのに極めて重要である。生物多様性を人々の健康および生計と結び付けるこの手法は、より広範に適用すれば、世界中の何百万という小規模農家の生活改善につながる持続可能な新しい道筋を明らかにできる可能性がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度