Article

構造生物学:抗真菌剤カスポファンギンによるβ-1,3-グルカン合成酵素阻害の構造基盤

Nature 654, 8118 doi: 10.1038/s41586-026-10409-7

免疫不全患者の増加に伴い、侵襲性真菌感染症は生命を脅かす重大な脅威となっている。しかし、抗真菌薬の種類が限られていることに加え、薬剤耐性の増加により、その治療はいまだに困難である。臨床薬として重要なエキノカンジン系抗真菌薬は、菌類の細胞壁生合成に必須のβ-1,3-D-グルカン合成酵素(GS)を標的とするが、最近の研究にもかかわらず、GSの触媒作用、Rho1による調節、およびエキノカンジン抗真菌薬による阻害や耐性の機構の多くは未解明である。本研究で我々は、触媒作用に関連する条件下での出芽酵母(Saccharomyces cerevisiaeSc)由来の天然のScFks1のクライオ電子顕微鏡構造を決定し、ScFks1と、抗真菌剤カスポファンギン(CFN)、トランスロケーションチャネル由来のグルカン産物、Rho1の間の相互作用を明らかにした。本研究で決定した構造から、CFNが膜とタンパク質界面において、グルカン輸送チャネルから伸長するグルカン産物を介してFks1に結合し、三者複合体を形成することで、グルカンポリマーのトランスロケーションを阻害するという、これまで想定されていなかった阻害機構が明らかとなった。また、臨床的に重要なエキノカンジン耐性変異S643Pを有するScFks1の構造解析から、この変異がアロステリックな構造変化と直接的な立体障壁の両方を通じて、CFNとグルカンの結合を不安定化させるという耐性機構が示唆された。さらに、Rho1の結合がドナー基質の結合に関与する「ラッチループ」を含む、触媒に必須な活性部位の再配置を誘起することが分かった。さらに我々は、補助サブユニットとしてYMR295Cを特定した。これらの知見は、GSによるグルカン生合成の分子機構、およびエキノカンジンによる阻害と耐性の仕組みを明らかにするものであり、合理的な抗真菌薬設計に向けた基盤を提供する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度