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生物工学:Cas9によるメチル化感受性ゲノム編集の分子基盤

Nature 653, 8116 doi: 10.1038/s41586-026-10384-z

細菌のCRISPR–Cas9(Cas9)ヌクレアーゼは、幅広い生物のゲノムを操作する強力なツールとなっている。しかし、ゲノムの至る所に存在するDNAメチル化を十分には利用できていない。この不備を補うべく、本論文で我々は、メチル化感受性Cas9(ThermoCas9)の生化学的および構造的な特徴付け、ならびにヒトゲノム編集における特徴付けについて報告する。ThermoCas9は、in vitroでそのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)である5′-NNNNCGA-3′、もしくは5′-NNNNCCA-3′の上流のDNAに効率良く結合して切断する。しかし、どちらのPAMであっても、5番目のシトシンがメチル化されると(5mCpGあるいは5mCpC)、ThermoCas9の活性は著しく阻害される。ThermoCas9のクライオ電子顕微鏡構造を、切断前の状態(分解能2.8 Å)と切断後の状態(分解能2.2 Å)で決定したところ、PAMとの結合における非メチル化シトシンの厳密な必要条件が分子レベルで明らかになり、酵素をさらに工学的に操作するための手掛かりが得られた。我々は、明確に異なるDNAメチル化状態にあるヒト細胞株において、ThermoCas9によるメチル化感受性DNA編集が行えることを実証した。さらに、触媒活性を高めたThermoCas9が、乳がん患者において常に低メチル化状態にあるルミナルタイプの発現シグネチャーを構成する遺伝子を効率良く標的にすることも実証した。このように、ThermoCas9はDNAメチル化に対する感受性のおかげで、疾患に関連した低メチル化状態にある細胞を特異的に標的にすることができ、これによってゲノム編集技術のさらなる個別化が図れるだろう。

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